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「お盆は海に入ってはいけない」のはなぜ? 意外に多いお盆のタブーとは

公開日:  /  更新日:

著者:鶴丸 和子

お盆は虫取りや釣り、引っ越しもNG?

 先祖を供養する特別な時期であるお盆には、タブーとして言い伝えられていることもあります。諸説ありますが、「やってはいけない」といわれる代表的なものを紹介しましょう。

○虫など生き物の命を奪ってはいけない
 お盆は不殺生戒(ふせっしょうかい)の期間とされ、生き物の命を奪うことにつながることはやってはいけないといわれています。そのため、虫取りや魚釣りをタブーとする地域も。また、先祖が虫を乗り物にしてこの世に帰ってくる説、先祖の魂がほかの生き物に姿を変えてやってくる説などがあります。お盆に先祖を迎えるために、どんな生き物も粗末に扱ってはいけないといった考えが土台にあるようです。

○海や川など水辺に近づいてはいけない
 子どもの頃に、「お盆は海に入ってはいけない」と言われた経験がある人もいるかもしれません。お盆は、あの世からこの世に魂が戻ってくる時期。供養されない寂しい魂がこの世をさまよい、生きている人を道連れにしようと、三途の川につながる水の中に引き込むと信じられていました。そのことから、海や川など水辺に近づくことはタブーとされたようです。

 ただし、単なる迷信とは言い切れない理由も。お盆の時期の海ではクラゲに刺されたり、海水浴場でも高波や離岸流が発生して巻き込まれたりするおそれがあります。身を守るための知恵から生まれた言葉ともいえるでしょう。

○引っ越しをしてはいけない
 お盆は、先祖の魂が“里帰り”する期間。先祖の魂が「どこに帰って良いのかわからなくなる」のを避けるために、お盆中の引っ越しは控えたほうが良いといわれています。

○祝い事をしてはいけない
 お盆は親戚や友人が集まることが多いので、結婚式や祝宴を開きやすい時期といえますが、入籍なども含めて祝い事は避けるべきとされています。車や家など大きな買い物も、祝い事に通じるとして控えるところがあるでしょう。先祖や亡くなった人に対して、精一杯のおもてなしをして供養することがお盆という考えが理由のようです。

○針やトゲのあるものを用いてはいけない
 血は「穢れ」とされているので、お盆にうっかり血を流す可能性があるものを用いることはタブーといわれています。たとえば裁縫などの針仕事は、誤って針で指を刺して血が出てしまうことがあるため、お盆の時期にやってはいけないとされました。トゲのある草花を飾ることも避ける傾向にあります。

風習の由縁を知って心豊かに過ごそう

 以上、お盆にやってはいけないと伝えられていることを紹介しました。お盆は先祖や亡き人の魂を迎え、供養するための特別な時期。その間の行事やタブーとされることは、先祖や亡くなった人を偲び敬い、感謝する心が関係するといえるでしょう。

 言い伝えのとらえ方は個々の考えによりますが、由縁を知ることで、日本の風習であるお盆をより心豊かに過ごせるきっかけになるかもしれません。

(鶴丸 和子)

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)

和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
インスタグラム:tsurumarukazu