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「初物を食べると寿命が延びる」といわれるのはなぜ? 長寿にまつわる言い伝え
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江戸時代には「初物四天王」も存在
江戸時代では、カツオやサケ、ナス、マツタケを「初物四天王」とし、初物のなかでもとくにありがたい縁起物としていたそうです。
たとえば「初鰹」。カツオには春と秋の2度の旬がありますが、春先の初物は珍しく、注目されていたようです。そして、同じく魚の「初鮭」。今は通年スーパーマーケットでサケを見かけますが、昔は秋の走りとして人気でした。「初茸」はキノコ全般との説もありますが、現代でも高額な初物のマツタケのこと。「初茄子」は、初夏の味覚として珍重されていたそうです。ナスは初夢の「一富士、二鷹、三茄子」にも登場するように、縁起物として扱われていました。
このほか、新茶や新米が「初物」として、現代でも人気があります。お茶でいえば、八十八夜に摘まれた茶葉でいれたお茶は「飲むとその年を無病息災で過ごせる」とか「不老長寿のご利益がある」と言い伝えられているほどです。
初物を食べるときは笑って向く方角もある
さらに、初物を食べるときの“お作法”に関しても言い伝えがあります。「笑いながら食べると福がやってくる」というものです。
地域によっては、向く方角もあります。一般的に「初物は西を向いて笑って食べる」のは、江戸を中心にした東日本に多い風習です。西には極楽浄土があると信じられてきたことから、阿弥陀仏に感謝を表すためといわれています。
一方で「初物は東を向いて笑って食べる」のは、京都や大阪など西日本。東は日の出の方角にあたり、太陽の恵みへの感謝を示すのが理由のようです。
敬老の日の頃は、「実りの秋」の始まりでもあります。さらなる長寿と健康を願い、笑顔で初物を楽しむのも良いかもしれません。
(鶴丸 和子)
鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。
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