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「小学生がムダ毛なんか気にするな」 親から一蹴された女の子を救った出来事 公認心理師が子どもとの接し方で気をつけたいと考えていることとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

「ただ『外見にこだわるな』というのは無理がある」

 公認心理師と漫画家、二足のわらじを履く白目さん。著書には「白目むきながら心理カウンセラーやってます」(竹書房刊)があります。そんな白目さんに、今回のエピソードを通してどんな思いを伝えたかったのか、お話を伺いました。

Q. Xに投稿したきっかけを教えてください。
「きっかけは、娘から同じような話を聞いたからです。クラスで毛の話題になったというのを聞いて、『そういえば……』と思い出しました」

Q. この出来事のあと、女の子の様子に変化はありましたか?
「この出来事の前後は、とても落ち込んでいたと思います。でも、次の日にみんなで傷だらけになったのを見て笑っていました。中学生になってからも、いつも処理には気をつけていたと思います」

Q. 今後、娘さんが体毛を気にする年頃になったとき、どのようなことを伝えたいですか?
「外見を重視する考え方は差別的考えにもつながる、そのお話はしたいと思います。ただその一方で、今の世の中ではまだ『処理をする』流れが優勢であり、むしろここ数年で強くなっているような気がしています。

 そのなかで生きている娘に、ただ『外見にこだわるな』というのは無理があると思うのです。私が私の考えで、私の体を好きにするのは自由です。ただ、娘は私とは違う人間です。気にしていないのであればそっとしておきますが、娘自身が『今』『気にしている』と訴え、『どうにかしたい』と真剣に悩んでいるのなら、私は協力すると思います。

 望ましい考え方を取り入れるのも大事ですが、無理に抑圧すると、あとで影響が出てくることもあります。たとえば、ゲームを強く禁止されると、ゲームに対して過剰に拒否的になったり依存的になったり……という事例もよく目にします。

 まずは、娘の考えを尊重して応えます。具体的には、カミソリを勝手に使用されて、どこかの誰かのように傷だらけになっては困りますので、安全シェーバーによる処理方法や、アフターケアなどをレクチャーするのではないでしょうか。そのうえで、面倒さや理不尽さについて娘が考える機会があれば、外見についての考え方を少しずつ話し合っていきたいと思います」

「一番傷ついた言葉は『気にしすぎ』『気にするな』」

Q. 子どもに対して「気にするな」など否定しないように心がけていても、つい言ってしまうことも。どんなことに気をつければいいでしょうか?
「私も夫も、娘に傷ついてほしくないので『気にしなくていい!』とついつい言ってしまいがちですが、まずは『自分も気にしていた過去』を思い出すよう心がけています。私も小さい頃から周りの目を気にする子どもでした。そんなときに、一番傷ついた言葉はやはり『気にしすぎ』『気にするな』と、さも“気にしている私が悪い”かのように言われたことでした。

 気にしないようにしようと思っても、そのやり方がわからなかったこと、気にしている自分が異常だと思うと周りに相談できなかったことなどが思い出されます。その気持ちを思い出すと『そうだよね。気になるよね。それ言われたらどんな気持ちになった? 何が怖かった?』と、あとからでもフォローしやすくなると思います。

『気にするな』という言葉で『そっか!』と思える子ももちろんいます。『気にするな』のあとに『私はあなたのこと大好き』とつけ加えることで笑顔になる子も。大切なのは、目の前のお子さんが『気にしなくなる』までに何が必要で、何に引っかかったのかをきちんと聞いていくことではないでしょうか」

Q. 心に残ったリプライは?
「『自分も嫌だったのに、大人になった今、つい「気にするな」と言ってしまっていることに気づいた』という内容のリプライを、何件かいただきました。私も大人になった今、子どもの頃はおかしいと思っていたはずの大人たちの言葉が口から出ていることがあります。

『そんなのは本当の友達じゃない!』とか『勉強しておかないと後悔する』とか。それは私が大人になってから本当の友達に出会うことができたから、勉強していて良かったと思える場面に出会ったからこそ言えること。つまり、答えを知ったからこそ、考え方が間違っていたことがわかったのです。

 そして、本当に大事なのは子どもに『答え』を教えることではなく、答えに結びつくための道筋につきあうことだと思います。子どもはきっと『お母さんも悩んでいた』『でも、あるときこう考えられるようになった』という答えにたどり着くまでの『道筋』を知りたいのではないでしょうか。この投稿をきっかけに『自分も嫌だったのに』ということを思い出してくださったことで、親子関係がより良くなる一助となったのであればうれしく思います」

 繊細で複雑な思春期の心。適切な距離感で、子どもの思いや考えに寄り添いたいですね。

(Hint-Pot編集部)