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腐っていないのに、なぜ豆腐? 「やっこ」と呼ぶ由来とは 意外に知らない豆腐の謎
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著者・教えてくれた人:和漢 歩実
豆腐の別名「やっこ」 その正体とは?
豆腐を「やっこ(奴)」と呼ぶことがあります。由来には諸説ありますが、主には2つのことが言われています。
1つは「奴さん」説です。もともと「奴」とは、日本料理の調理用語で、食材を大きい立方体に切ることを「奴に切る」と表現します。「奴」とは、江戸時代の大名行列で、槍を振って歩く「奴さん」のこと。今でもお正月のやっこ凧や歌舞伎舞踏の所作などでも知られています。その奴さんの着物の模様が四角だったことが始まりとされています。四角の模様が、豆腐の形に似ていることから、豆腐そのものを「やっこ」と呼ぶようになったようです。
もう1つは「冷たい」がなまった説です。「冷ややか豆腐」が「ひやっこい豆腐」となり、「ひやっこい」が「ひややっこ」になまり、冷たい豆腐が「冷ややっこ」に。この「やっこ」が豆腐を意味するようになったとの見解もあります。
木綿派? 絹ごし派? 栄養面ではどちらが優秀?
このように日本人に古くから親しまれてきた豆腐は、消化が良く「畑の肉」と呼ばれる大豆の栄養をほぼ丸ごと摂取できる優れた食品です。
豆腐には、木綿豆腐と絹ごし豆腐がありますが、木綿や絹で豆乳をこすのではなく、製法の違いによるものです。木綿豆腐は、穴の開いた型に入れ、重しをして水分を抜きながら固めるのですが、この型に木綿の布を敷いていたことから「木綿」の呼び名が付いたといわれています。一方、絹ごし豆腐は、穴のない型で水分を抜かずそのまま固めます。なめらかな見た目と食感から、木綿に対して「絹」の名前が付きました。
同じ製法でも凝固剤の種類によって、カルシウムやマグネシウムといったミネラルの含有量は大きく変わりますが、一般的には木綿豆腐のほうが絹ごし豆腐より水分が少ないため、栄養価は高いといわれています。代謝に欠かせないビタミンB1、体内の余分な水分や塩分を体外に出すカリウムは、絹ごし豆腐に多く含まれている傾向にあります。
栄養面でいえば、どちらが優秀ということはありません。良質なたんぱく質を主成分とする大豆を原料にしているため、低エネルギーでありながら健康に良い食品です。食感の好みで選ぶと良いでしょう。
(和漢 歩実)
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾