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「上司が男性で言い出しにくかった…」 生理休暇は取得しづらい? 休暇形態や課題を社労士に聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

生理痛に悩まされても、生理休暇は取りづらい現状が(写真はイメージ)【写真:写真AC】
生理痛に悩まされても、生理休暇は取りづらい現状が(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 労働基準法で定められた法定休暇のなかには、有給休暇や産前・産後休暇のほかに、生理休暇があります。働く女性を保護するために定められた制度ですが、ほかの休暇よりも取りづらく、また、生理休暇という名称から取得に抵抗もあるようです。そこで、株式会社ロイヤルホテルでは今年、ダイバーシティ&インクルージョン推進の一環として、生理休暇の見直しを行いました。その後、女性社員からはどのような反応があったのでしょうか。また、生理休暇取得の問題点などについて、社労士の鈴木教大さんに話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

1947年に法制化された生理休暇 現代も取得率は低い

 生理休暇は、女性が生理日の就業について著しく困難な状況にある場合、取得することができる休暇制度です。企業は従業員から請求があった場合、必ず休暇を与えなければなりません。日本では戦後間もない1947年、労働基準法が制定されたときに法制化されました。

 それにもかかわらず、現代においても、ほかの休暇と比べると取得率が低いのが現状です。厚生労働省が公表した「令和2年(2020年)度雇用均等基本調査」によると、「女性労働者のうち、令和2年度中に生理休暇を請求した者」の割合は0.9%、「女性労働者がいる事業所のうち、令和2年度中に生理休暇の請求者がいた事業所」の割合は3.3%にすぎませんでした。その傾向は、ほとんどの企業で今も大きく変わっていないようです。

生理休暇の名称と制度を改定した企業も

 株式会社ロイヤルホテルでも、多くの女性が活躍しているなか、生理休暇の申請はほとんどありませんでした。女性の視点から、働きがいの醸成と働きやすい環境の整備について考える社内の部門横断チーム「Royal Women’s Committee」からの提言を受け、今年6月1日より生理休暇の名称を変更。さらに、取得の単位や取得事由の適用範囲を拡大しました。

 それにはどのような背景があったのか、同社経営企画部ブランド戦略推進室室長の高坂順子さんに話を伺いました。

「『生理という直接的な表現が取得の心理的障壁になっている』との声を受け、名称変更に至りました。とくに、上司が男性のみの職場では、我慢して勤務しているとの声が多く上がっていました」

 こうして同社では、生理休暇を「female(女性)」の頭文字である「f」を用いて「F休暇」に変更。「名称変更は生理という直接的な表現を避けることを目的とし、『Royal Women’s Committee』の事務局と一部メンバーで話し合って決定しました」と高坂さんは説明します。

 改定前の制度内容は、休暇の取得は1日単位、適応範囲は生理日(就業が著しく困難な場合)とされていました。一方、改定後は休暇を半日からでも取得可能に。また、生理の症状には個人差があることから、適応範囲に生理日だけでなく月経前症候郡(PMS)も認められるようになり、個人の症状に合わせて選べる、実用性のある制度に変更されました。

 改定前から休暇の取得可能日数は「必要と認めた日数」とされ、制限は設けていません。また、医師の診断書などの取得も不要で、本人から上司(所属長)へ申し出ることで取得できます。

「休暇形態は有給休暇ではなく、弊社独自で規定した『特別有給休暇』(夏休み、冬休み、冠婚葬祭休暇、妊娠通院休暇など)扱いになります。年次有給休暇も半日からの取得を認めていることから、F休暇についても取得申請しやすいよう同様に設定いたしました」

 名称と制度の改定が行われてから3か月。7~8月の2か月間では計10日、取得申請がありました。そのほとんどが1日だけの取得でしたが、「上司が男性で言い出しにくかったけれど、社内の通知もあって申請できました。1日だけの利用でしたが、体が楽になりました(30代・宿泊部門)」との声も。

 同社では、女性が心身ともに充実した状態で能力を発揮できるよう、これからも取り組みを推進していくとしています。