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「扶養に入れないと損しちゃうんでしょ?」 いまさら聞けない「103万円の壁」 税理士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

よく耳にする「103万円の壁」。超えるとどうなる?(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
よく耳にする「103万円の壁」。超えるとどうなる?(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 所得税が発生しないライン「103万円の壁」。約30年ぶりに控除額の引き上げが検討されており、大きな注目を集めています。しかし、この「103万円の壁」について、超えると家計にどのような影響を与えるのか、実のところよく理解していない人も多いでしょう。そこで、豊富な実務経験がある税理士でマネージャーナリストの板倉京さんが解説します。

 ◇ ◇ ◇

「年収の壁」を気にするA子

 毎年、年末になると友人のA美(52歳)から連絡が来ます。

「私、夫の扶養に入れるのかな? 扶養に入れないなら、12月の仕事を断ろうかなと思っているんだよね……」

 A美はフリーランスで食の仕事をしています。カルチャースクールで料理教室の講師や、テレビ番組で使う料理を作る裏方など忙しそう。

「今の仕事が大好きだから、体が動く限りは働いていきたい」と生涯現役宣言までするA美ですが、なぜか「年収の壁」を超えることをとてもおそれています。

「夫の扶養に入るために仕事をセーブするってもったいなくない?」と言うと、「でも、扶養に入れないと損しちゃうんでしょ? 夫がすごく気にするんだよ」との返事。確かに、中途半端に「年収の壁」を超えてしまうと手取りが減り、働き損になってしまいます。

 でも、「年収の壁」を大きく超えれば、実は手取りを増やすことができるのです。今回は、働き損にならないための「年収の壁」について紹介したいと思います。

「106万円の壁」をうっかり超えるとどうなる?

「年収の壁」とは、税金や社会保険料の負担が生じることにより、手取り額が減少する可能性のある年収のボーダーラインのこと。

 パートタイムやアルバイトで働く人には、6つの「年収の壁」があります。

1. 「100万円の壁」 住民税がかかり始める
2. 「103万円の壁」 所得税がかかり始める
3. 「106万円の壁」 自分自身で社会保険への加入義務が発生(厚生年金加入者が51人以上の事業所等に勤務している人の場合)
4. 「130万円の壁」 配偶者の社会保険の扶養からはずれる(60歳以上の人は180万円)
5. 「150万円の壁」 所得税の配偶者特別控除が満額受けられなくなる(夫の所得税・住民税が増える)
6. 「201万円の壁」 所得税の配偶者特別がなくなる(夫の所得税・住民税が増える)

 6つの壁のうち、影響が大きいのは3の「106万円の壁」と4の「130万円の壁」、つまり社会保険の壁です。

 税金の壁は、実は影響があまり大きくありません。仮に、2の「103万円」の壁を超えて106万円まで働いたとしても、所得税は1500円です。

 それに対して、社会保険料の壁は影響大です。

 106万円を少しだけ超えて勤務先の社会保険に加入することになると、年間16万円程度の社会保険料を負担することになり、手取りが大きく減ってしまいます(40歳以上の人の場合)。

 仮に106万円を超えて働く場合は、年収約125万円以上、働きましょう。そうすれば、106万円以上の手取りを受け取ることができます。