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「扶養に入れないと損しちゃうんでしょ?」 いまさら聞けない「103万円の壁」 税理士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

国保・国民年金を払うなら、年収約180万円以上を目指すべし

 A美のようにフリーランスで働く人や、勤務先に社会保険制度がない人が気にするべき壁は、4の「130万円の壁」、配偶者の社会保険の扶養からはずれる壁です。

 この場合、社会保険の扶養からはずれると、国民健康保険と国民年金に加入します。仮に130万円をうっかり超えて扶養からはずれてしまった場合、国保と国民年金で年間30万円程度(40歳以上の場合)の保険料を払うことになるのです。

 つまり、手取りが100万円になってしまうということ……。驚きの金額ですよね。しかも、会社の社会保険であれば将来もらえる年金が増えますが、国民年金の場合、将来もらえる年金は配偶者の扶養になっている人と同額です。配偶者の社会保険料の扶養をはずれる場合は、壁を大きく超えて稼がないと割に合わないのです。

 仮に130万円を超えて国保・国民年金を払うことになるのであれば、年収約180万円以上を目指しましょう。これ以下だと、手取りが130万円以下になってしまい、働き損になってしまいます。

 ちなみに、2023年10月30日から、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始しました。これにより、勤務先によっては「106万円の壁」や「130万円の壁」をうっかり超えてしまっても、扶養からはずれる必要がない場合もあります。繁忙期などで勤務時間を増やされることが多い人などは、事前によく確認しておくと安心でしょう。

「年収の壁」をよく理解し、自分に合った働き方を見つける

 ひとつ注意しておきたいのが、ここでいう年収は、給与を前提にしています。パートやバイトの場合はもらった給与の額ですから、今年いくら稼いでいるかは簡単にわかります。ところが、フリーランスの場合は、これを自分で計算しなくてはいけません。

 フリーランスの場合、社保の扶養からはずれるラインの130万円は基本的には年収ではなく所得です(配偶者の勤務先によって扱いが異なる場合がありますので、詳しくは勤務先の健康保険組合に確認してください)。

 所得とは、収入から経費を引いた実際の儲けのこと。この計算を覚えられず、A美は毎年「私って扶養に入れるの?」と相談してくるというわけです(笑)。

「年収の壁」を気にして働いている人は多いですが、実際に壁を超えた場合、どれくらい手取りが減るのか理解している人は少ないと思われます。ほとんどの方は、「なんとなく損をしそうだから」と就業調整をしている状況でしょう。少なくとも、働き損にならない働き方を理解していただければ幸いです。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。