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「結婚はコスパが悪い」は本当? 世帯手取り年収に実は大きな差が 税理士が解説
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生涯未婚率が上昇している日本。なかには「結婚はコストパフォーマンスが悪い」といった声も聞かれますが、果たして本当にそうなのでしょうか。「たった5日で相続対策 子どもに絶対、迷惑をかけたくない人のための」(ダイヤモンド社刊)の著者でマネージャーナリストの税理士、板倉京さんが解説します。
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「生活コスト」は2人になったからといって2倍ではない
「独身はお金を自由にできるし最高!」「結婚はコスパが悪いからしない」という人がいます。実際に、私の友人・知人にも独身の人はとても多いです。彼らが独身でいることを「コスパ」の良し悪しで決めているかどうかは別として、「お金」の面から見て「結婚は本当にコスパが悪いのか?」を、お金の専門家として検証してみたいと思います。
まず、「生活コスト」から。独身者は家族持ちに比べて、かかるコストの総量が少なくなることも多いでしょう。とはいえ、1人が2人になったからといって、コストも倍になるわけではありません。
住まいについては、独身時代に住んでいたところに結婚後も住み続けるという話も聞きますし、仮に結婚して30平方メートルの部屋から60平方メートルの部屋に移り住めば、有効スペースが広くなり(トイレやお風呂は同じくらいの広さなので)快適になるうえに、家賃も光熱費も倍まではかかりません。
食事も、1人分を作るのも2人分を作るのも、材料費で考えるとさほど変わりません。独身者の場合、1人分の料理を作るのは面倒くさいですし、外食やテイクアウトの比率が高くなっている人も多いのではないかと思います。そうなれば、逆に高コストです。
このように「生活コスト」で考えると、コスト効率という意味では、独身者の分が悪いと言えそうです。
扶養内で働く配偶者がいる家庭は税金だけで8万円もお得
そして、最近話題の「手取り」の面から見ると、独身者は圧倒的にコスパが悪いと言えます。なぜかというと、日本の税金や社会保険料は「家族持ち」がお得になるようにできているからです。
では、どのくらい「家族持ち」がお得なのか、具体的な2つのケースで見ていきたいと思います。
ケース1は、世帯主の年収が同じ700万円の場合。「独身」と「扶養の範囲内(年収130万円)で働く配偶者がいる人」では、どれくらい違いがあるのか比較します(図参照)。
たとえ扶養の範囲内でも、1人で働くより2人で働くほうが世帯収入も増えるのは当たり前ですが、メリットはそれだけではありません。
扶養家族がいれば税金負担も安くなります。独身者の税金が年間64万2300円なのに対して、夫婦の場合は2人分で56万1300円。世帯年収は夫婦のほうが高いのに、税金は約8万円も安いのです。
社会保険は、独身であろうと家族持ちであろうと支払い額は同じ。健康保険料は、たとえ扶養家族が5人いようと、1人分の保険料さえ払えば良いのです。さらに厚生年金保険料も、世帯主1人分を払えば、扶養家族であるパートナーの国民年金保険料分も支払ったことになります。
国民年金保険料を自分で負担するとなると、年間20万円弱を払わなければいけません。対して、扶養されている配偶者は1円も払わずに、国民年金保険料を払った人と同じだけの年金が将来もらえます。
独身者が将来もらえる年金は1人分ですが、扶養配偶者がいる家庭は、同じ保険料で将来もらえる年金が1年で約80万円(現行の満額支給の場合)増。10年もらえば約800万円、20年なら約1600万円も多くもらえるということです!
現役時代の手取りも、税金が安い分、家族持ちと独身者とでは年間で、扶養配偶者が稼いでくる年収130万円以上の差がついてしまいます。なかには会社から「扶養家族手当」が出る人もいて、そうなると手取りの差はもっと広がるでしょう。
家族持ちのほうが“優遇されまくり”です。「ちょっとずるいのでは?」と思うほどお得ですよね。