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仕事・人生

30代女性米農家が振り返る「令和の米騒動」 「急に価格は上げられない」 米農家が葛藤する現実

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

物価高騰を価格に反映できず赤字 米農家としての葛藤も

 昨今の燃料や肥料の高騰は、米に限らず農家の経営を直撃しています。前年の価格から30キロで1000円、10キロや20キロで500円の値上げをしないわけにはいきませんでした。

「これでも厳しいですけど、急には上げられないと思います。価格を上げたらお客様が離れてしまうかもしれないし、上げて売れる自信があるかというと……」と簡単には価格転嫁できず、悩みが尽きません。

 実際、西田さんが米農家としてスタートを切って以降、「正直なところ米だけでは赤字です。少なくともトントンまで持っていくには、もっと数を売らないといけないとかわかっているんですけど、味を維持するため栽培方法を変えたくない。でも、米作りは続けていきたい」と葛藤を打ち明けます。

家族の支えにも感謝 「自分が育った町や米を多くの人に知ってほしい」

 会社員時代は仕事が忙しく、小さな頃の子育てが周囲に任せきりになった時期もある長男は10歳に。「今は働く姿を間近で見ているせいか、悩んでいると『そういうこともあるよね』なんて言ってくれて、むしろこっちが助けられている」といいます。

 また、配偶者にも「私のことを一番わかっている人。のめり込みすぎると『今、一番やりたいことはどれ? できることはひとつしかないでしょ』と的確に声をかけてくれます」と、全幅の信頼を置いているそうです。

 米農家としてだけでなく、マルシェの運営や農産物などのフェアトレードと忙しく活躍する西田さん。「純粋にこの町が好きなんだと思っています。大変だけど、自分が育ってきたおいしい米を立科町以外の方に知ってもらいたいし、人とのつながりを大切にしたいんです」と話す表情は輝いています。

(芳賀 宏)