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“あいさつ不要論”が出る日本とは対照的 買い物や交通機関でもあいさつ必須のイギリスやフランス 日本人女性が感じたこととは
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あいさつのバリエーションがさらに多いフランス
その習慣に慣れたと思っていた私でも、フランスに移動してからまた驚きました。なぜなら、そのあいさつの頻度や範囲が輪をかけて広いから。冒頭に書いた「Bonjour(こんにちは)」はもちろん、「Merci(ありがとう)」「Au revoir(さようなら)」の3点セットは、いつでもどこでも欠かせません。
さらに、向こうもあいさつをしてくれるのが普通なので、「Bon journee(いい一日を)」などと言われると「Merci, vous aussi(ありがとう、あなたも)」とお返しするまでがセット。ある程度定型化しているとはいえ、なんとなくどういう流れなのかがわかるまでは、少しどぎまぎしてしまいます。そして、このあいさつ一回に割かれる時間が長いのだなぁと改めて思いました。
さらに、イギリスではあまりありませんでしたが、フランスでは店員さんなどのスタッフだけでなく、その場にいるほかの人たちにもあいさつをします。たとえば、病院の待合室に入ったときや、待っているときにほかの患者さんがいればあいさつをします。それに、お店に入るときや出るときも、ほかのお客さんがいれば声をかけますし、電車内で車掌さんが見回りで歩いて来たときなども例外ではありません。とにかくこれでもかというほど、さまざまな場面で、誰にも彼にも必ずあいさつします。
ここまで徹底したマナーは、私も初めての経験。フランスへ引っ越した最初の頃は、言われてから初めてお返しするくらい、どこで言ったらいいかわかりませんでした。ところが、今ではもう、どこでも言うというマインドセットでいたほうが簡単なことに気づきました。つまり、一日中何かにつけて言い続けてもまったく不自然ではなく、逆に言い続ける必要があるかもしれません。
日本では“あいさつ不要論”が議論になるほど、あいさつ自体を不要に思っている人、形式だけで気持ちのこもっていないあいさつはいらないと考える人もいると知り、驚きつつなるほどなぁと思いました。あいさつは相手を敬い、敵意がないことを示す、簡単で有効な手段です。知らない人とあいさつすること自体に抵抗があったり、しなくてもある程度の平和が保たれたりしているのは、日本の治安の良さゆえなのかもしれませんね。
前述した通り、日本では買い物のときなどにお店の人にすらあいさつしなくても成立することが多いため、あいさつのハードルが高くなりがちです。しかし、訪日外国人が年々増加し、職場などでもグローバル化が進むなか、あいさつの習慣は身につけておいてもいいかもしれません。
(Moyo)

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。
