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「子どもの気持ちを聞いてあげて」 バイオリンが上達しない小学2年生、心配する母親…ベテラン講師がレッスンを「お断り」したワケ
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4歳からバイオリンを習い始めた小学2年生の男の子のレッスン希望を「お断りした」――。ベテラン講師が体験談を綴ったSNS投稿が話題を集めました。習い事にいかにも熱心だった男の子の母親、「何が1番好き?」という問いかけに対する男の子の答え……。講師は「子どもの気持ちを聞いてあげて」と痛切に感じたそうです。詳しい話をお聞きしました。
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「お母さんの思いがあふれて、『なかなか上達しません』とフルフルした声で涙目に」
投稿者は、バイオリン講師歴15年のあっぴ バイオリンの先生(@violin2525enjoy)です。X(ツイッター)に「レッスンを丁重にお断りした話」として報告しました。
体験レッスンに来た小学2年生の男の子。「白いニットにネイビーのパンツという服装は育ちの良さを感じさせるものの、クシャッとした笑顔が子どもらしくてかわいい」という印象です。
もともと他の先生に習っていたそうですが、今回あっぴ先生を訪ねてきました。心配そうな母親に事情を聞くと、4歳から始めたのに教本の1巻が未だに終わっていないそうです。「お母さんの思いがあふれて、『なかなか上達しません』とフルフルした声で涙目に。さらに、『前の先生はとても優しかったので、厳しくお願いします』とのことでした」。
あっぴ先生は4年間で教本が1冊も終わらない現状について驚き、こう考えを巡らせたそうです。
「ゆっくりペースなので、私は彼になにか特性があるのではと疑った。例えば、細かい楽譜がうまく見えていないとか、見たものを頭で処理して手先を動かすまでに時間がかかる、複数のことを同時にできない等、人にはいろいろな特性がある。私はこれをチェックするため、初見の曲を彼に弾いてもらった」
気になる結果は「すごくうまくはないけど、1回目にしては75点くらい。つまり、彼はバイオリンが下手なわけではなかった」。きちんとした腕前を持っていたことが分かりました。
あっぴ先生は、男の子との会話を通して本心を聞き、“原因”を探ろうとします。
「私は彼に聞いた。
私『バイオリン好き?」
子『習い事の中では嫌いな方』
私『そっか!他に何習ってるの?』
子『今は英語とスイミングとピアノと習字とバレエとそろばん』
私『すごい!何が1番好き?』
子『僕は友達とサッカーがしたいんだ』」
ここで男の子の本音を聞くことができました。それは、友達と一緒にサッカーを楽しみたいということでした。それでも、母親は「習い事で何が好きか聞かれてるでしょ!」と、男の子を叱っていたそうです。
あっぴ先生はXに自身の考え、そして決断を綴りました。
「お母さん、そうじゃない。
子どもの気持ちを聞いてあげて。
楽器は日々の練習が必要なので、他の習い事が多いと上達が難しいことや、年齢的に本人の気持ちが向かないと難しいということをお伝えし、定期的なレッスンは見送らせてもらいました。
でも、何て言ってあげたら良かったのか、今でも思い返して悩みます……」。今ももどかしい気持ちを抱えているそうです。
習い事と育児に関する投げかけは大きな反響を呼び、3000件以上の“いいね”を集めています。「お子さんの立場に立ってお考えになった、優しい判断だと思います」「習い事ってついつい親の思いが先行しがちな気がします…自分も気をつけないと」「お母さんの気持ちもわかるけど、子どもの本音を聞き出してくれる先生の姿勢に感動しました」「親のエゴで習い事させず、子どもの気持ちを優先しなくちゃなと改めて感じました」「一定期間したら子供に気持ちを確認することにしてます」「親は、自分がやらせたい事をやらせがち」といった共感をはじめ、深く考えさせられたというコメントが多くお届きました。
さらに、「昔の自分と重なりました!」「私も子供の頃、やりたいと言った習い事はさせて貰えず、全て母親が選んだ習い事に嫌々行っていました。自分の子供には習い事の無理強いはしてません」など、幼少期に同じ経験をしたという声も寄せられています。