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お金

賃貸派と持ち家派 “おひとり様”の場合は結局どちらがいい? 税理士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

月8万円の賃貸を50年間借りたら総額5000万円に

 持ち家をすすめるもうひとつの理由は「安心感」です。

「持ち家がある」「生涯住むところに困らない」という安心感は、“おひとり様”にとって何物にも代えがたいと思うからです。

 言ってみれば、賃貸は「掛け捨て保険」のようなもの。賃料を払っている間は住み続けることができますが、払ったお金は戻ってきません。一方、持ち家は「終身保険」。いつまで払うかを設定して、支払いを終わらせれば一生住み続けることができますし、途中で解約(売却)すれば売却額を受け取ることができます。

 仮に40歳の人が90歳まで50年間、月8万円の家賃を払い続けるとしましょう。一度も引っ越さず2年に一度の更新料を払ったとして、総額約5000万円を支払う(掛け捨てする)ことになります。

 持ち家と比較のため、月額8万円の賃料に見合う物件の金額を、投資利回りの観点から逆算します。利回りを4%として計算すると、大家が購入した価格は2400万円程度。もし、2400万円をフルローンで借りたとして、40歳から65歳までの25年間で完済する場合、毎月の返済は約9万円(金利1%、元利均等払いで試算)です。

 固定資産税・管理費の負担はありますが、働いている間の25年間、頑張ってローンを払えば、老後は低いコストで住み続けることができますし、売却すれば売却額を得ることができます。この安心感は捨てがたい、そう思うのです。

家賃8万円の賃貸物件で借りた場合と買う場合を比較【画像:Hint-Pot編集部】
家賃8万円の賃貸物件で借りた場合と買う場合を比較【画像:Hint-Pot編集部】

 現在、賃貸に住んでいる人は、今後持ち家を買うのか、ずっと賃貸を続けるのかを一度考えてみてください。働いているうちは賃貸も身軽でいいのですが、仕事を辞めて収入がダウンしたあとも、家賃を払い続けることができるのかどうかなど、「今が良ければいい」「先のことは考えたくない」などと言わず、この記事をきっかけに老後の我が身を想像しながら、今後のことを考えてみていただきたいと思います。

 もし、「老後は今の家賃を払い続けるのは難しそう」ということになれば、「家賃を下げる(その場合はどんなところに住むのか?)」「持ち家を買う」「実家に戻る」など、今のうちにシミュレーションしておくことをおすすめします。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。