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仕事・人生

「そんないい話があるわけない」 日本人女性が2度目の渡仏で手に入れた成功への道筋 レストランオーナーになるまで

公開日:  /  更新日:

著者:Miki D'Angelo Yamashita

運命の出会いからレストランをオープン

 たまたま食事にきていた日本人のお客様が杉山さんのデザートを気に入り、出資の申し出をしてくれたのです。

「そんないい話があるわけないと、その場では真に受けなかったんです。その代わり、日本に帰ってくることがあったら食事でもしましょうと連絡先をいただきました。人見知りなので、いつもなら連絡することはないのですが、そのときはなぜか連絡しなければという思いに駆られてお会いしました。その後、少しずつ話が進んでいき、ケーキ店やサロン・ド・テ(喫茶店)をオープンすればと提案してくださいました。私としては、やはり、レストランのデザートに携わりたい。やるならレストランがベストという思いでした」

 3年ほどの準備期間を経て、トリュフィエールで意気投合したシェフを誘い、2016年12月、ついに自分のレストラン「Accents Table Bourse(アクサン・ターブル・プルス)」がオープン。33歳のときでした。コンセプトは、ガストロノミーレストランでありながらも子どもも連れて食事ができる肩肘張らない店。証券取引所(ブルス)近く、パリの中心地に店をかまえました。

予約ゼロ、シェフ不在の危機を乗り超える

 最初は知り合いが来てくれて満席が続いたものの、しだいにお客様も少なくなり予約ゼロの日が続くように。オープンから数か月後には、そんな苦労もあったそうです。

「ひとりもお客様が来なくても店を開けてアピールしましたし、ホテルからの予約がもらえるように営業もしました。しばらくすると、シェフとの関係もうまくいかなくなり、ついにはシェフが店に来なくなる事態に陥りました」

 さまざまな危機を乗り越え、店を軌道に乗せる杉山さん。次回は、ロマンシェフとの二人三脚でレストラン経営を進めていく過程を追います。

(Miki D’Angelo Yamashita)

Miki D’Angelo Yamashita

コロンビア大学大学院国際政治学修士、パリ政治学院欧州政治学修士。新聞社にて、新聞記者、雑誌編集記者、書籍編集として勤務。外信部、ニューヨーク支局、パリ支局、文化部、書籍編集部、週刊誌にて、国際情勢、文化一般を取材執筆。