食
2月28日は「ビスケットの日」 意外に古い日本での歴史、表面に空いた謎の穴…知っているようで知らない豆知識
公開日: / 更新日:

2月28日は「ビスケットの日」。年代を問わず親しまれているお菓子ですが、日本ではいつから食べられるようになったのかなど、意外に知らないことがたくさんあります。また、似たお菓子にクッキーがありますが、何が違うのでしょうか。そこで、記念日にちなみ、全国ビスケット協会の専務理事・島田純さんにビスケットの豆知識を教えていただきました。意外にも古い、その歴史とは?
◇ ◇ ◇
日本にビスケットが伝わったのはいつ?
ビスケットの歴史は古く、ヨーロッパでは、古代から航海や遠征のための食糧として2度焼いたパン、つまりビスケットの原型を携行していたとか。コロンブスやマゼランも、長い航海に乗り出すときは、船に大量のビスケットを積み込んだという話が残っています。
日本に伝来したのは戦国時代で、種子島に漂着したポルトガル人により、鉄砲やカステラ、金平糖、ボーロといった南蛮菓子とともに伝えられたとみられています。渡来後は、長崎や平戸付近でヨーロッパへの帰路用ビスケットが作られていたと考えられていますが、明確な記録はないようです。
それが史実に初めて現れたのは、江戸時代のこと。水戸藩士の蘭医(編集部注:江戸時代、オランダから伝わった医学を学んだ医師)・柴田方庵が記した「方庵日録」の中に、「ビスコイト」(編集部注:ポルトガル語でビスケットのこと)の名が登場します。
長崎に滞在していた方庵は「『ビスコイト』は保存がきく」という点に着目。そのレシピを水戸藩に宛てて送ったことが「方庵日録」に記されており、日本でビスケットが作られていたと明確にわかる最も古い記録です。その日付が1855(安政2)年2月28日でした。
2月28日が「ビスケットの日」の理由とは
また、ビスケットの語源はラテン語の「ビス・コクトゥス・パーニス」で「2度(ビス)、焼かれた(コクトゥス)、パン(パーニス)」という意味です。「方庵日録」の2月28日の日付が「22(にじゅうに)、8(やく)」という語呂合わせにもなります。そのことから、1980年に全国ビスケット協会が毎年2月28日を「ビスケットの日」と制定しました。
ところで、全国ビスケット協会のウェブサイトには、「方庵日録」のレシピに基づいて試作された「ビスコイト」の写真が掲載されています。
「ビスコイト」は長期の航海に用いる保存食なので、小麦粉と食塩、水を練って生地を作り、しっかりと焼き上げられていました。そのため、食べると歯が折れそうなほどに固く、小さく割って口の中で溶かしながら食べたのだろうと思われます。残念ながら、味はあまりおすすめできるものではなく、現代のおいしいビスケットとはまったくの別物です。
ビスケットとクッキーを区別するのは日本だけ
ビスケットとクッキーの違いについて聞かれることが多いのですが、クッキーはビスケットの仲間です。
日本には、公正取引委員会、消費者庁の認定を受けた「ビスケット類の表示に関する公正競争規約」の定義があります。簡単にまとめると、ビスケットとクッキーの違いは以下の通りです。
○ビスケット
小麦粉、糖類、脂肪分などを原料とし、混合器、成型機、ビスケットオーブンで焼き上げたもの
○クッキー
ビスケットのうち「手作り風」の外観を有し、糖分及び脂肪分の合計が40%以上のものをクッキーと表記して良い
実は、ビスケットとクッキーに規約で区分を設けているのは日本だけで、イギリスではビスケット、アメリカではクッキーと呼びます。これは、1971年に消費者団体から「消費者は、ビスケットよりクッキーのほうが高級なものとして認識しているので、定義してほしい」と要請があったため。それに応える形で生まれた、日本独自のローカルルールです。