お金
長男に300万円の車を買ってあげた、相場の4分の1でマンションを娘に売りたい…贈与税はかかる? 税理士が解説
公開日: / 更新日:
自宅を夫婦共有名義にしたものの実際の返済はすべて夫

「自宅を新築しました。3分の1を妻名義にしようと思い、かかった費用3000万円のうち1000万円分は妻名義で10年のローンを組みました。返済額は年に110万円ですが、妻は収入がないので、実際は夫である私がローンを返済しています。年に110万円までは贈与税がかからないので、いい方法だと自負しています」
【解説】
自宅を共有にする場合は、注意が必要です。不動産の名義は、資金の負担分通りの割合にしなければなりません。
仮に、妻が資金を負担していなかったり、実際は、3000万円のうち500万円しか負担していなかったりするのに、3分の1を妻名義で不動産登記すると、その時点で「資金を出した夫から名義者妻への贈与」ということになってしまいます。
質問のケースでは、購入時には妻の持ち分に相当する資金を妻名義でローンを組んでいるので、登記時点では問題はありません。問題なのは、妻のローンを夫が返済している点です。贈与税は基礎控除(年間110万円)を超えた金額に対してかかります。
年の返済額が110万円なので一見、贈与税がかからないようですが、この行為が税務署に連年贈与(1000万円を分割で贈与する約束をしている)と指摘されるかもしれません。仮に1000万円が連年贈与とみなされた場合、231万円の贈与税がかかることになります。
ちなみに、贈与税を払うことなく、自宅を配偶者に贈与する方法もあります。「贈与税の配偶者控除」という制度を利用するのです。これは、20年以上の婚姻期間がある夫婦間で、自宅そのもの、もしくは自宅を取得するための資金を贈与する場合、2000万円まで贈与税がかからないという特例です。
贈与税の基礎控除と合わせ、2110万円までは無税で贈与ができます。この制度を利用する場合は、特例を使う旨の贈与税の申告が必要になります。ただし、質問のケースのように、妻のローンを夫が返済している行為は、この制度の対象外です。
子どもに借用書なしでお金を貸してあげる
「長女が家を新築することになり、1000万円貸してほしいと言われました。とはいっても、長女は子育て中でお金がいくらあっても足りないはず。ですから『無理して返さなくてもいいよ』と言ってあげたんです」
【解説】
親子間で金銭の貸借をする場合は、税務署に贈与とみなされる可能性があります。 そうならないためには、「あげた」のではなく「貸した」ということを立証できるようにしておかなければなりません。具体的にどうすればいいかは、赤の他人にお金を貸したらどうするかを考えてみましょう。
仮に、赤の他人にお金を貸すことになれば、金銭消費貸借契約書(借用書)を作成し、返済予定を決めた上で、利息も取るはずです。娘さん相手に、無利息で返すのはいつでもいいなんて約束をすれば、「貸した」とはみなされません。返済は、証拠を残すため口座を通して行いましょう。こういった手続きが整えば、税務署に対して「貸したのだ」と主張できます。
しかし、借用書も存在しない、返済の形跡もない状態では、実質的に贈与だと言われても反論ができませんよね。ちなみに、贈与だとみなされれば贈与税の対象となります。貸付金と認められた場合でも、相続時点で返済していない部分があれば、その貸付金残高は相続税の対象となります。
将来的に相続税が見込まれる場合、贈与税を避けてなおかつ相続税の負担を減らすためには、子どもの自宅購入時に、親が資金提供した分を親の名義で登記(共有)するという方法があります。親の共有分はのちに相続税の対象になりますが、不動産の評価は現金の評価よりも低いため、現金で相続するよりも相続税を減らす効果があります。
(板倉 京)