仕事・人生
姉の乳がんから考え始めた「後悔しない生き方」 男性から女性になった今、KABA.ちゃんが伝えたい声を上げる意味
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3月8日が「国際女性デー」と国連で定められてから、今年で50周年を迎えます。2021年から女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた特集「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を実施してきた株式会社Creative2は、節目の年となることを記念して、今年は「女性の生き方を考える」をテーマに運営する3つの媒体で企画を展開します。
「Hint-Pot」では、「自分らしく生きる女性」にクローズアップした特別企画を掲載します。タレントで振付師のKABA.ちゃんは、2016年に性別適合手術を受け女性に戸籍を変更しました。その行動へ突き動かしたのは、「後悔しない生き方とは何か」ということ。女性になった現在も貫かれている、その思いの背景に迫りました。
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乳がんになった姉の言葉が重く、心に響いた
後悔しない生き方ってなんだろう。
そんなことを考えるようになったのは、私が40歳になったとき、姉が乳がんになったことがきっかけでした。
私の家庭は複雑で、姉とは一度も一緒に暮らしたことがなかったのですが、大人になってから仲良くしていました。乳がんになったと連絡をもらい病院へ会いにいったとき、姉から「昨日まではなんでもなかったのに、急にがんになった。人間、いつ何が起こるかわからないから、あなたも後悔しない生き方をしなさい」と言われて。その言葉が重く、心に響きました。
それから「後悔しない生き方ってなんだろう?」と、考えるようになりました。大好きな芸能界に入り、こうやって仕事もさせてもらえている。でも2002年に性同一性障害ということをカミングアウトしたのはいいのですが、見た目はそのままだから「恋愛になるといつもうまくいかないな」と思い始めていたのです。
「残りの人生、女性になってもいいんじゃない?」で固めた決意

そんなとき、男性から女性になったある人のブログを読んだんです。思い切って、匿名でメールを送ったら、丁寧にお返事をいただいて。女性になる方法やメリットとデメリットなど、いろいろなことを聞かせてもらいました。でも、やっぱりすぐには決断できなくて。仕事や家族のことなどを考えると悩みました。
カミングアウトとはまた違うハードルを感じて、どうするのか、自分の中で7年くらい悩んでいたとき、ある方が私に「80歳まで生きるとして、40年ぐらい男性としてやってきたんだったら、残りの人生、女性になってもいいんじゃない?」と言ってくれて。その言葉が、自分の中でスッと腑に落ちたんです。「もう、女の子として生きていいよね」と。
性別適合手術や戸籍変更に向けては、いろいろな手続きがあり、クリニックで医師の診断も受けるのですが、そのときに聞いたのは「後悔する人」もいるということ。女性になって戸籍を変えたのに、思い描いた未来と違ったと感じる人もいるそうです。手術したものは元に戻せないので、自分の中に揺るぎない覚悟がないといけないのだなと改めて感じました。
そして2016年、私は女性になりました。
女性になってからは、うれしさと感動の連続です。服装も女性らしくできるし、スカートもはける。飛行機では、荷物を上げるのに手間取っていたら、男性が手伝ってくれてうれしくて。そんなの人生で初めてでした。筋力が落ちたのでジャムのフタが開かなくて、昔は「嘘でしょ!?」と思っていたけど、本当になるんだってびっくりしましたね(笑)。