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「幕の内弁当」と「松花堂弁当」の違い どんな場面で食べる? 知っておきたいそれぞれの背景にあるもの

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

十字に仕切られた箱に盛りつけられる松花堂弁当(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
十字に仕切られた箱に盛りつけられる松花堂弁当(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 新生活がスタートする春は、食事を兼ねた集まりの機会も増える季節です。そんな場面で用意されることが多いのが「幕の内弁当」や「松花堂弁当」。見た目は似ていますが、祝い事や法事、または会社の会議といったシーンごとに、どちらを選ぶべきか決まりはあるのでしょうか。意外に知らない両者の違いについて、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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明確な決まりはないが、背景を知って適したものを

 結論から言うと、シーンによって幕の内弁当と松花堂弁当のどちらを選ぶべきか、明確な決まりはありません。

 どちらも、さまざまなおかずが色鮮やかに少しずつ入っていて、一見似ていますが、その起源や特徴には違いがあります。それらの背景を知ったうえで、その食事会の目的や用途に適した弁当を選んでいくと良いでしょう。

幕の内弁当は芝居の幕間に楽しむ食事

 幕の内弁当の誕生には諸説ありますが、江戸時代の庶民の娯楽から登場したとする説が有力です。当時の娯楽といえば芝居であり、朝から夕方まで一日がかりで楽しむものだったといわれています。芝居見物の際、幕間(まくあい)に食べるものとして生まれたのが幕の内弁当です。

 江戸時代後期の書物には、幕の内弁当の中身として「握飯10個、こんにゃく、焼豆腐、干瓢の煮付、芋の煮付、かまぼこ、卵焼」といった内容が記されています。当時、かまぼこや卵焼きは貴重な食材であり、これらが入った幕の内弁当は、ぜいたくで人気のあるお弁当だったようです。

 現在も、幕の内弁当はコンビニエンスストアや弁当店で売られています。ごはんは、白米に黒ゴマを散らし、梅干しがのっているのが一般的です。俵型に型押しされているのは、本来の握飯が俵型だったことの名残といわれています。

 おかずは、汁気のないものが数種類、少しずつ詰め合わせになっています。焼き魚や卵焼き、煮物や揚げ物、かまぼこ、漬け物などが定番ですが、メインのおかずにハンバーグやエビフライなど洋食が入っているものも少なくありません。また、ヘルシー志向で野菜のおかずが多いものもあります。