食
「幕の内弁当」と「松花堂弁当」の違い どんな場面で食べる? 知っておきたいそれぞれの背景にあるもの
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実
松花堂弁当は仕切られた箱に名前のルーツが
一方の松花堂弁当は、昭和初頭に料亭「吉兆」が提供したのが始まり。十字に仕切られた弁当箱が、呼び名の由来です。
その箱のルーツは、江戸時代初期の僧侶・松花堂昭乗(しょうじょう)にあります。昭乗は当時、農家が種入れとして使っていた仕切りのある箱をヒントに、十字の仕切りがある器を作り、絵具入れや煙草盆として使用していました。その器を料亭「吉兆」が改良して弁当箱として用いたことから、松花堂弁当の名がついたといわれています。
松花堂弁当は、茶の湯でのおもてなしとして提供された懐石料理の流れを汲んだもの。十字の枠に小皿を入れて、温かいものや冷たいもの、汁物などが盛りつけられているのが特徴です。味や寸法、分量、色彩などにこだわりがあり、目でも十分に楽しめます。
場の目的や用途に合わせて選ぼう
以上のように、それぞれの背景や特徴を踏まえると、手軽にいろいろなおかずが食べられる幕の内弁当はカジュアルな場に、懐石料理の流れを汲む格式ある松花堂弁当はフォーマルな場に適しているととらえておくと良いでしょう。
ただし、厳密なルールはありません。最近では、幕の内弁当でも高級感のあるものや、松花堂弁当でもカジュアルに楽しめるものがあります。食事会の弁当を選ぶことになったなら、その会の目的や参加者の好み、予算に応じて決めましょう。
【参考】
農林水産省「歴史を辿り、秋の行楽弁当を愉しむ」
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wagohan/articles/2209/spe9_02.html
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾