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やってはいけない遺産相続対策3選 税理士が教える、失敗しがちな行動とは

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

相続対策を間違えると、家族に迷惑をかけてしまう可能性が(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
相続対策を間違えると、家族に迷惑をかけてしまう可能性が(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

「遺産相続に関する仕事をしていると、『間違った相続対策』をしてしまったという残念な方にお会いします」と語るのは、マネージャーナリストで税理士の板倉京さん。家族のため、子どものために行った相続対策が、かえって家族に迷惑をかけてしまうことがあるといいます。そこで今回は、「やってはいけない相続対策」について解説します。

 ◇ ◇ ◇

やってはいけない相続対策1 聞きかじりで行う対策

「昨年、息子が家を購入するというので、頭金として1000万円を出してあげました。すると、今年になって税務署から『贈与税を払うように』と連絡が来たんです。子どもが家を買うときには1000万円までは贈与税がかからないと聞いたのに、200万円近い税金がかかると言われたんです……」

 ご相談に来たのは、村田享子さん(75歳・仮名)。夫は3年前に他界しています。亡き夫は上場企業の役員などを務め、享子さんが受け取った遺産は約2億円でした。

 つきあいのある銀行から、「享子さんも対策をしないと相続税が大変なことになる」と言われ、銀行主催の相続対策セミナーに参加したところ「子どもの家を買うときの贈与は、1000万円まで税金がかからない」という話を聞いたそうです。

 確かに、子や孫が家を買うときに行う贈与は、一定の要件をクリアしていれば無税で最大1000万円まで贈与できるので、相続税対策に有効です(令和7年現在)。

 ただし、この制度を使うためには、資金をもらった子や孫が期限内に贈与税の申告をする必要があります。ところが、享子さんの息子さんはその申告をしていなかったのです。ちなみに、「期限内」とは贈与を受けた年の翌年3月15日まで。

 そう話すと、村田さんは「セミナーではそんなこと言ってなかった……」とびっくりしていました。このように、聞きかじりの知識で行う相続対策はとても危険なのです。

 最近は、さまざまな媒体で相続や贈与についての情報が出回っていますが、これらは限られた尺(時間や紙面)の中でトピックスを提供しているに過ぎません。にもかかわらず、それを聞きかじり、しっかり調べずに自分に都合のいいように取り入れると、失敗する可能性が高いです。

 残念ながら、村田さんの息子さんは期限内に贈与税の申告をしていなかったので、177万円の贈与税+ペナルティを負担することになります。なんとも残念なお話です。

 ちなみに、どんな特例があるかを知っているのと知らないのとでは、払う税金がまったく違います。しかし、税務署は税金が安くなる制度について「あなたの場合、この特例を使うと有利です。そのために必要な手続きはこれです」などと親切に教えてくれることはまずありません。

 だからこそ、税金はしっかりとした知識を持って臨むべきであり、専門家に相談すべきなのです。ポイントは、大きなお金が動くとき(贈与や不動産の売買など)。こういったときは「使える制度や気をつけるべきことがないか」など、税理士に相談することをおすすめします。