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やってはいけない遺産相続対策3選 税理士が教える、失敗しがちな行動とは

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

やってはいけない相続対策2 適当な贈与

 前回の記事でも紹介しましたが、生前贈与は家族内のやりとりなので、つい適当になりがちです。でも、適当な贈与はのちのち税務署に目をつけられて、大変な目に遭う可能性もあるので要注意です。

「どのくらいの贈与なら税務署にバレないですかね?」「うちみたいな貧乏な家には、税務署なんか入らないでしょ」といった質問をする人がいます。

 また、非課税枠(110万円)を超える贈与を受けても、贈与税の申告をしていない人は少なからずいます。悪気がないのは「家族間のお金のやりとりに税金がかかるなんてピンと来ない」からだと思うのですが、そんな理屈は税務署に通りません。税務署の調査能力を侮ってはいけません。

 贈与の申告漏れがバレるのは、往々にして相続のときです。税務署には銀行などに対する調査権がありますから、亡くなった人はもちろん、その家族の口座情報を入手して、あらぬ贈与がなかったかを調査できるのです。

 調査の結果、疑わしければ税務調査、追徴課税となります。ちょっとした税金を払わないために、そんな怖い思いはしたくないですよね。正しく節税・正しく納税を心がけていただきたいと思います。

やってはいけない相続対策3 業者の言いなりで行う対策

 相続税がどれくらいかかるかを、無料で査定してくれる業者が増えています。我が家に相続税がかかるのか、かかるとしたらどのくらいかは知っておきたい情報ですから、最初の一歩として利用するのは悪くないでしょう。

 ただ、相続税の試算はけっこう骨の折れる作業です。本来、無料ではとてもできません。

 では、なぜタダでやってくれるのかといえば、その裏に「売りたい商品・サービス」があるから。そして、そのためには、なるべく高めの相続税がかかったほうがいいわけです。

 相続税には「自宅の土地を8割引にしてくれる特例(小規模宅地等の特例)」や「配偶者(妻や夫)がもらった財産なら、1億6000万円まで(それを超えても法定相続分まで)は税金がかからない制度(相続税の配偶者控除)」などがあります。

 そういった大型特例を使わずに試算すれば、びっくりするような相続税がはじき出されることもあるわけです。

 もし、そういった業者さんが近づいてきて、アパート建築や節税サービスをすすめてきたら……。その話に飛びつく前に、税理士に相談したほうがいいでしょう。

 以前、こんな相談がありました。親が「遺言信託契約」を信託銀行と結ぼうとしているので、相談に乗ってほしいと言われたのです。

 遺言信託とは、信託銀行などが遺言書作成のサポートをして、遺言執行人を引き受けるサービスです。その信託銀行が出してきた相続税の試算をチェックしたところ、間違いだらけで、びっくりするような高額の相続税が書かれていました。

 しかも遺言書を勝手に書いてきたそうで(!)、その遺言書も節税とは真逆の、かえって税金が高くなる内容でした。そして、遺言執行人はもちろん信託銀行になっていました。信託銀行の目的のひとつが、この「遺言執行人としての遺言執行料」。これは高額です。

 信託銀行などが設定する遺言執行料は、財産の額が増えるほど高額になる仕組みになっていて、最低金額も150万円以上と決められているところがほとんど。仮に、財産が1億円程度の場合、200万円前後の費用がかかってきます。

 この費用に、相続税の申告料や不動産の登記費用は入っていません。そういったことも理解しないまま契約をしてしまう人も多いようで、いったん契約してしまうと、あとから子どもたちがこの契約を破棄しようとしても、破棄できないようになっています。

 大手である銀行に相続を頼めるという安心感を望む人であればいいのかもしれませんが、理解しないまま「銀行なら安心」と契約を結ぶのはおすすめできません。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。