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「ルールを守る私たちは異様な存在」 日本人女性が欧州暮らしで感じている大きな違いとは

公開日:  /  更新日:

著者:Moyo

ロンドンで歩行者の待機場所となっている中央分離帯【写真:Moyo】
ロンドンで歩行者の待機場所となっている中央分離帯【写真:Moyo】

日本でひと昔に流行った「赤信号、みんなで渡れば怖くない」──そんなフレーズを「イギリスで生活していたときは、よく思い出していた」と語るのは、海外在住歴8年になるMoyoさんです。その理由はなんなのでしょうか? 外国暮らしのリアルを綴るこの連載。55回目は、イギリスやフランスでの交通マナーを紹介します。

 ◇ ◇ ◇

信号無視は当たり前

「紳士の国」と呼ばれるイギリス。マナーを大切にする習慣があるため、一般人の交通マナーも良いのかと思うかもしれませんが、そういうわけではありません。それは、信号の前になるとわかります。とくに私が住んでいた首都・ロンドンでは、歩行者用信号が赤でも、人々はまったく気にせず渡っています。車が目と鼻の先に見えていても、左右をさっと確認して、少しの隙を狙って渡る人をよく見かけました。

 押しボタン式の信号が多いのですが、このボタンを押して、赤信号が青信号になるまでちゃんと待っている人は果たしているのかというくらい、信号の意味がないと言っても良いかもしれません。ただ、子どもに青信号で渡るようにしっかり教えている親子連れなどもいて、逆に印象的だったのを覚えています。

 さらに、横断歩道のない車道の真ん中を堂々と渡るのも、怖気づく様子はまったくありません。車道の真ん中に、中央分離帯のような人一人が待てる小さなスペースがあることが多いからでしょう。一本渡って、進めそうになかったらそこで待って、また次も渡るという、ハードルの低さがあるのかもしれません。

歩行者じゃなくなると怖さも

どちらを注意すれば良いのか、地面に書いてあるのでわかりやすい【写真:Moyo】
どちらを注意すれば良いのか、地面に書いてあるのでわかりやすい【写真:Moyo】

 自分が歩行者のときは、これも習慣の違いかというくらいに受け止めていました。しかし、以前書いたように自転車に乗るようになってからは、この歩行者マナーに何度も憤慨する羽目に。とくに信号が変わって、さあ出発するぞというときに無理やり渡ろうとする人や、スピードを出しているときに横からいきなり車道を渡ろうとする人が出てくるので、肝が冷えます。シティセンターや観光客の多いエリアは、なかなかスリル満点でした。

 自転車でこんなにひやひやするので、車やモーターバイク、バスの運転手さんたちはどれだけ神経をすり減らしているんだろうと、同情したことがあります。クラクションをしょっちゅう鳴らしていて、なんて運転が荒いんだろうと思っていましたが、それもそのはず。こんなに歩行者のマナーが悪いなら、鳴らしたくなるのも納得です(もちろん車同士や自転車、モーターバイクなどにもでしょうが)。

 この習慣は、その後移住したフランスでも同じ。今住んでいるエリアはトラムが走っているので、今度はトラムvs歩行者という構図が広がっています。トラムが出発する鐘が鳴っているのに、その目前を堂々と歩いている人たちを見ると、少しげんなりすることも。電車のように踏切などがない、さらに信号を気にしないというダブルコンボで無法地帯となり、渡り放題です。ただ、私のパートナーは赤信号だと絶対に渡らず待つという稀有なタイプなので、ルールを守る私たちは、周囲から異様な存在に見えていると思います。

 日本に帰って、車が通っていないのにきちんと赤信号を待つ人を見かけると、日本はお天道様を含めて「誰かが見ている」という意識が浸透しているのだなと、改めて感じます。調べてみると、日本は歩行者でも信号無視の罰金は最大2万円。一方、イギリスは一切科されないようなので、そんな法的な違いも関係しているのかもしれませんね。

(Moyo)

Moyo(モヨ)

新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。