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「サムライロード」として海外からの脚光を浴びる中山道 外国人観光客を魅了するワケとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

江戸時代の史跡が多く残る山道 茶屋を復活させる試みも

細久手宿と大湫宿の間に、ほぼ完全な形を残している八瀬沢一里塚【写真:Hint-Pot編集部】
細久手宿と大湫宿の間に、ほぼ完全な形を残している八瀬沢一里塚【写真:Hint-Pot編集部】

 江戸時代の風情が多く残る中山道には、さまざまな史跡も点在しています。たとえば、当時の旅人たちが目印にした「一里塚」です。山道の両脇に、こんもりとした数メートルの土盛りを一里(約4キロ)ごとに築き、その上に松などを植えた一里塚は、往来する人たちの距離の目安としての役割を果たしていました。

 現在は「京都まで○里」「江戸まで○里」と目安の石標がありますが、これは後年に設置されたものです。ほとんどの一里塚は、都市開発などで失われました。しかし、中山道江戸から47番目の宿場である大湫宿周辺では、当時の姿そのままの一里塚が今も残されており、全国的に貴重なものとなっています。

 ただし、街道沿いにかつて多くの旅人たちでにぎわった茶屋はなく、現代の生活に欠かせないコンビニエンスストアも見当たりません。そこで北村さんが考えたのは、街道沿いの茶屋を“復活”させることです。すでに1店舗、古民家を改装したカフェが、完全予約制で昼食や軽食の提供を始めています。

「それまではお弁当を持って歩かなくてはいけませんでした。自分が何度も中山道を歩いているからこそ、生まれたアイデアなんです。どうしたら楽しんでもらえるか、満足してもらえるかを考えるときに、その立場になって考える必要がありますね」

 これまで、中山道歩きをする観光客は、道中で冷たい弁当を食べるしかありませんでした。しかし、この古民家カフェの登場によって、歩き疲れた体を休ませながら、地元食材を使った温かい昼食を楽しめるようになりました。

「『旅の途中でこんなおいしい料理が食べられるなんて』と評判です。中山道をめぐるツアー参加者の満足度も上がっていると聞いています」

 店長の三宅信乃さんによると、繁忙期の昨秋は約1か月半にわたって客足が途絶えず、休日もなかったとか。「休日がないといっても、完全予約制なので、繁忙期でも1日に数人をおもてなしする程度です。まもなく春の繁忙期に入ります」といいます。

 地元産のブランド鶏「恵那どり」を使ったチキンカツやおにぎりが人気。リクエストに応じてヴィーガンメニューも提供しています。

「伝統と文化が感じられる」エリアに初訪日の外国人も感嘆

オーストラリアから馬籠宿を訪れていた(左から)グレッグさんとアシュリンさん【写真:Hint-Pot編集部】
オーストラリアから馬籠宿を訪れていた(左から)グレッグさんとアシュリンさん【写真:Hint-Pot編集部】

 観光庁がまとめている、日本国内居住者の2023年「年間都道府県別集計表」で岐阜県は31位ですが、「訪日外国人消費動向調査」の集計結果によると、外国人観光客の都道府県別訪問ランキングでは15位。国内以上に、海外からの注目が高いことがわかります。

 オーストラリアから馬籠宿を訪れていたカップルは、当初の旅程には京都を組み込んでいたそうですが、最終的にこの東美濃エリアを訪れることを選んだといいます。

「僕はマーシャルアーツ(柔道や空手などの東洋の武芸)にも親しんでいます。それで、SNSで『サムライトレイル』と呼ばれるこのエリアを目にして、来てみたかったんです。日本の古き良き原風景が残り、伝統や文化も感じられるこのエリアはとても素晴らしいです」

 新しい観光スポットは作れても、歴史や伝統、文化はすぐに生まれません。島国という地理的条件もあり、日本では長きにわたり独自の文化や伝統が育まれ、受け継がれてきました。日常的に過ごしているとその価値に気づきにくいものですが、外国人の視点を通すことで、唯一無二の魅力であることを改めて実感できます。

 国や文化を超えて、人々を魅了する中山道。ときには喧騒を離れ、約400年前の人たちが見ていた情景へ思いを馳せる時間を過ごしてみるのも良いかもしれません。

(Hint-Pot編集部)