仕事・人生
「佐久間さんにも頭を抱えられた(笑)」 3年待ちの予約困難店「食堂とだか」 わかっていなかった「孤独のグルメ」の影響力
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恋人の上京をきっかけに東京へ 飲食業から離れたことも

鹿児島を離れたことがなかった戸高さんに、転機が訪れたのは27歳のとき。陶芸教室の先生で、のちに妻となる恋人が東京へ行くことになったのをきっかけに、戸高さんも上京します。
「飲食の仕事をするなかで、トップクラスの店を見てみたいと思ったんです。六本木の有名和食店にお世話になりましたが、続きませんでしたね」と振り返ります。そのことで、一時は飲食業から離れようと考え、1年ほど別の仕事に。
一度は、料理から距離をとった戸高さんですが、結婚して子どもが生まれ「ちゃんとした職に就かなきゃ」と考えた戸高さんは、再び飲食業界へ戻りました。妻の友人の店を手伝って2年ほど経つと、「自分の料理を出す店を出したい」と思うようになり、31歳で「食堂とだか」をオープン。しかし、店の経営はそう簡単にはいきません。

今でこそ、隠れ家的な立地も魅力のひとつである店の場所は、大通りからそれています。実際に訪れた人のみならず、人気を不動のものにした「孤独のグルメ Season6」(テレビ東京 以下「孤独のグルメ」)最終話の登場回で、松重豊さん演じる主人公が躊躇したように、テナントビルの入り口は、一見の客にはハードルの高さを感じさせる面も。
「自己資金が350万円しかなかったんですよ(笑)。昔、携帯料金を延滞したせいで公庫から借りられなかったし……。だから家賃を抑えられる物件しか選べなかったんです。看板を出したりしましたが、なかなか大変でしたね。最初の半年は全然軌道に乗らなくて、歯を食いしばって頑張るしかない状態。仕入れをして、仕込みをして、店を開けて……ワンオペだったので店を片づけたあとは、そのまま倒れ込んでいました」
苦労しながら必死で店を続けるなか工夫を凝らした戸高さんの料理は、グルメな業界人の多い五反田界隈で少しずつ常連を掴み始めます。選べるお通し、何度も食べたくなる定番メニューに加え、ダチョウの肉などの珍しい食材を使った日替わりのアラカルトもあります。
ほかの店にはない魅力は、戸高さんの「自分が行きたい店」という発想で作られていました。