仕事・人生
撮影タイムや音楽とのペアリングも 3年待ちの予約困難店「食堂とだか」 人気が衰えない理由とは
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一般的な業態と同様に、飲食店であっても資本や人材など、企業の体力があるほうが有利なことから、個人店が人気を博すのは至難の業です。そうしたなかカウンターのみ、わずか8席で東京・五反田にオープンした「食堂とだか」は、複数店舗が数年待ちの予約困難店に成長しました。躍進の背景にはどんなことがあったのか、店主の戸高雄平さんにインタビュー。後編では、人気を継続するための工夫について、お話を伺いました。
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「どんなに珍しいメニューを作っても…」
開店時「自己資金が350万円しかなかった」ことから、飲食店には不利ともいえる立地でオープンした「食堂とだか」。戸高さんの工夫を凝らした、おいしくフォトジェニックな料理が人気を呼び、店は軌道に乗りました。そして「孤独のグルメ Season6」(テレビ東京 以下「孤独のグルメ」)に登場したことにより、一気に予約困難店へと躍進します。
こうした急激な変化があると、常連客が離れてしまうケースも。しかし、予約がなかなか取れなくなっても、材料費の高騰などでコースメニューの価格が上がっても、多くの常連客が次の予約を入れて店をあとにするのが「食堂とだか」の特徴です。
その原点は、戸高さん自身が「自分が行きたい店」という考え方。さらに戸高さんは、開店当初や店が軌道に乗り始めた頃の気持ちを明かします。
「ナンバー1より、オンリーワン。唯一無二の店にしたかったですね。どんなに珍しいメニューを作っても、人気が出ればすぐに真似されてしまう業界。そうしたなかで競わないといけないから、安泰じゃありません。選ばれる店になるためにも、うちの店でしかできない体験をしてほしい……その工夫は料理以外のことでも、いつも考えています」
「エンタメ的に楽しんでもらえるように」 料理だけではない工夫も

もともとSNSの口コミで人気を集めていただけに、コースでは食材やメインの料理を取り分ける前に見せる撮影タイムは盛り上がります。また、「食堂とだか」では、料理と音楽とのペアリングも。
「90分くらいのセットリストを作っています。10品くらいの料理を音楽に合わせて出すのですが、たとえば『タラの白子とイクラ』や『カツオフライ』にサザエさんの曲を流すとか、セイコガニを出すときには松田聖子さんの曲とか(笑)。気づくと盛り上がるので、エンタメ的に楽しんでもらえるようにやっています。ただ、話が盛り上がっているときは邪魔にならないよう、抑えめに……(笑)」
訪れるたびに新しい料理と出合えるだけでなく、客を飽きさせない、喜ばせることを常に考えているのが、人気が衰えない秘訣のようです。