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どうぶつ

「人間の介護に近い」 増加傾向にある老犬介護 プロが伝える“今からすべきこと”とは

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

立ち上がることのできない大型犬が、散歩ができるまでに回復

ドッグアナトミー整体施術中の清水さん【写真提供:あにまるケアハウス】
ドッグアナトミー整体施術中の清水さん【写真提供:あにまるケアハウス】

「ドッグケア スマイル」は、昨秋に開業6年を迎え、多くの愛犬とその飼い主のケアを行っています。

「これまでに多くの犬のケアを手がけてきましたが、やはり最も記憶に残っているのは、お客様第1号のラブラドールレトリーバーですね。当時12歳。変形性脊椎症などの影響で、後ろ足が弱って立ち上がれなくなっていたんです。飼い主さんにご自宅でできるマッサージやケアをお伝えし、私も一緒にサポート。すると、しだいに状態が改善し、ついには自分の足で立って、散歩ができるまでに回復したんです。飼い主さんが本当に感激してくださり、歩けるようになったわんちゃんも元気にシッポを振っていて、私もうれしくなりました」

「飼い主が変われば愛犬も変わる」という清水さん。飼い主の思考や感情は、ペットに大きな影響を及ぼすと話します。

「たとえば『心臓病があるからなるべく安静にしなきゃいけない』と思って、散歩を控えたり、なるべく動きを制限したりすることがあります。でも、考え方を変えて、その子にあった筋力維持のケアを考えてもらえると、コミュニケーションの時間が増え、できなかったことができるようになるなどして、飼い主さんのモチベーションも上がります。そうすると、飼い主さんとわんちゃんの笑顔も増えて、良いサイクルにつながっていくと思います」

 飼い主が喜ぶと犬も喜んでくれるので、「家の中の雰囲気はとても大切」だという清水さん。しかし、頑張りすぎてしまうのも注意したい点だといいます。

「愛犬の介護は、人間の介護に近いと思います。飼い主さんが倒れて共倒れになってしまうことも。だからこそ、飼い主さんの健康が一番大事です。自分のことを後回しにしてまで頑張る飼い主さんもいて、悪循環に陥ることもあります」

 ひとりで頑張っていると視野が狭くなりがちに。そういったことを防ぐためにも、愛犬が老いたときを早くからシミュレーションし、若いうちから知識を収集して備えておくことが大切です。また、そうした知識は、後悔のない看取りをするうえでも必要になってきます。

「死生観は人それぞれ違うので、正解はありません。でも、いろいろな選択肢を知ったうえで、飼い主さんが納得できるものを選択できるように知識をつけておくと良いと思います。人から言われたことを鵜呑みにして、納得しないまま選択してしまうと、すごく後悔してしまうことがあります。大好きな飼い主さん自身が選択したことであれば、わんちゃん自身も受け入れてくれるはずです」

 私たちより先に老いてしまう愛犬のために。早くから老いや死と向き合い準備することが、結果的にそれぞれの健康寿命を延ばすことにつながっていくのかもしれません。

◇清水佐知子(しみず・さちこ)
愛玩動物看護師、老犬介護スペシャリスト、ペット食育協会(R)指導士、ペットマッサージセラピストほか、愛犬のケアに関する資格を多数所持。約14年間、動物看護師として働き、埼玉県羽生市に「ドッグケア スマイル」を立ち上げ。老犬・老猫ホーム「あにまるケアハウス」とタッグを組んだ「愛犬のトータルケア講座」を開講中。

(和栗 恵)