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フランスで絶賛されたモンブランが日本に! パティスリー「MORI YOSHIDA」 吉田守秀シェフの挑戦と革新のストーリー

公開日:  /  更新日:

著者:Miki D'Angelo Yamashita

パティスリー「MORI YOSHIDA」を手がける吉田守秀シェフ【写真:Miki D'Angelo Yamashita】
パティスリー「MORI YOSHIDA」を手がける吉田守秀シェフ【写真:Miki D'Angelo Yamashita】

 フランス・パリで絶大な人気を誇るパティスリー「MORI YOSHIDA」。なかでもモンブランは、独創的なビジュアルと味で店を代表するスイーツです。オーナーシェフの吉田守秀さんに、モンブラン誕生の背景や、パティシエとして国境を超えて活躍する今の思いを伺いました。

 ◇ ◇ ◇

卓越した技術と創造性 高い評価を得る吉田さん

 パリのスイーツ界で存在感を放つパティスリー「MORI YOSHIDA」。ナポレオンが眠る歴史的建造物・アンヴァリッド近くの高級住宅街にあるガラス張りのショップは、2013年に日本人パティシエの吉田守秀さんによってオープンしました。

 当初から、店のショーケースには、ユズや抹茶など日本の素材を使ったケーキは並んでいません。あえて日本的な要素を使わず、国籍を超えたパティシエとして勝負する――そんな吉田さんの強い思いが込められています。

 2015年には、サロンデュショコラでC.C.Cの最高位金賞を受賞。その後、フランスの人気テレビ番組「LE MEILLEUR PATISSIER」(トップパティシエ)で優勝し、吉田さんの卓越した技術と創造性は、フランスのパティスリー界で確かな評価を得ています。

人気のモンブラン 独特フォルムの意図とは

「MORI YOSHIDA」のモンブラン【写真:Miki D'Angelo Yamashita】
「MORI YOSHIDA」のモンブラン【写真:Miki D'Angelo Yamashita】

 なかでも、パティスリー「MORI YOSHIDA」を代表するスイーツがモンブランです。本場・フランスでも絶大な人気を誇ります。マロンペーストにはフランス産の渋皮栗を使用。その上にふんわりとのせられたなめらかな生クリームからは、ラム酒の芳醇な香りが立ち上ります。

 最大の特徴は、そのフォルム。一般的に見られる細い糸状のクリームを山型に絞るスタイルとは異なり、小さな渦状を描くようにクリームを絞り上げ、まるで針葉樹のようなビジュアルに仕上げています。一度見たら忘れられない形ですが、吉田さんによると、このデザインの意図は、見た目ではなく別のところにあるそうです。

「このモンブランは、ビジュアルから入った形ではありません。細く絞った糸状のクリームでは、フランス人にとって栗の味の重みが足りない。パンチと深みを加えるためにマロンクリームをたっぷりのせるにはどうしたらいいか、試行錯誤の末、たどり着いたのがこのデザインです」

 フランスで生活して、フランスの食材を使い、フランスのトレンドを感じながら、フランス人のためのお菓子を作る。モンブラン誕生の背景には、味への徹底した探究心があったのです。

 アジア人としてのベースは大切にしつつ、フランス人の生活と文化に根付くフランス菓子を模索する。その姿勢こそが、パティシエ・吉田守秀のアイデンティティそのものです。

「地方には、まだまだ知らないフランス菓子もたくさんあります。郷土菓子の歴史や知識、技術を学びながら、フランス人に受け入れられるお菓子を極めていきたい」

 国境を超えて、フランス人を相手にフランス菓子で勝負する、並々ならぬ情熱を傾けていきます。