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仕事・人生

パチンコ店のアルバイトから店長を経てプロジェクト責任者に 40代女性の“逆境を気づきに変える”転換力

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

社員になったら「仲間たちが、しだいに離れていってしまいました」

「アルバイトから社員になった当時の私は、未熟でした。『社員になったからには、舐められてはいけない』と思い込み、偉そうな態度を取ってしまったことが多々あったと思います。その結果、アルバイト時代に一緒に働いていた仲間たちが、しだいに私から離れていってしまいました」

 中学生の頃に両親が離婚し、生活を支えるため、親と一緒に新聞配達の仕事をしていたという仲さん。そのときの経験から「誰かに頼るのではなく、自分の力で生きていかなければならない」という思いが強く根付いていたようです。

「そんな背景があったため、周囲に頼るよりも、自分だけで頑張らなければならないという考えに固執してしまったのかもしれません。仕事上の役割は異なっても、同じ目標を目指して働くチームの仲間であるということを、もっと意識すべきだったと気づいたんです。この経験を通じて、人との関わりの大切さや、感謝する心を学ぶことができたと思います」

店長に昇進するもコロナ禍でピンチに

 チームの仲間に感謝する心に気づいた仲さんは、働くことの意義や喜びを感じるようになりました。そして2019年、店長に昇進。当時、全国約300店舗ある会社のパチンコ店の中で、女性店長は仲さんを含めて3人でした。このとき、結婚・出産を経ていた仲さんは、子育てをしながら店長職も務める状況でしたが、会社も上司も積極的に背中を押してくれたことが心強かったと振り返ります。

 しかし、ここでまた“逆境”が訪れます。店長になった直後、コロナ禍に。店舗の来客数が減少し、存続が危ぶまれる状況に直面しました。「閉店」という選択肢が現実味を帯びるなかで、お客さんや従業員の居場所を失ってしまうのではないかという不安に、悩んだこともあったそうです。究極の選択、判断が求められました。

「お客様がたくさん来店し、従業員が楽しそうに仕事をしている状況であれば、とくに問題は感じません。しかし、コロナ禍のように売り上げや利益が大きく落ち込み、何をしても改善できない状況に直面したときどうするのか。経費削減を真っ先に考え、たとえば、新台の導入や人員の削減といった重要な部分に手をつける選択をしてしまいました。当時の私は、目の前の数値にばかり意識が向いてしまい、お客様やスタッフのことを十分に考えず、指示を出してしまったように感じています」

 しかし、この難局で、従業員一人ひとりが自分にできることを考え行動し、少しでもお客様に喜んでもらおうと努力する姿を目の当たりにし、「私自身が勇気をもらいました」という仲さん。そのときのことは、今でも考えることがあるといいます。

「お客様、従業員にとって、私の店舗の価値はなんなのか? という問いについて、自分の考えがいかに甘かったかを痛感しました。このような経験から、常に『なぜ?』『本当にこれでいいのか?』と、自分に問いかける姿勢を持つことの重要性を学びました」

 こうして数々の“逆境”から気づきを得て、乗り越えてきた仲さん。次回は、MBA取得など、学びの原動力について伺います。

◇仲奈稚(なか・なち)
1979年生まれ。2006年、株式会社マルハンに入社。2019年~2022年にパチンコ店長を経て、2022年より東日本カンパニーのブランド戦略部(旧マーケティング部)に配属。「ヲトナ基地プロジェクト」の責任者を務める。「人とつながりの力で、人生100年時代に生きるヨロコビを創造する。」という企業パーパスのもと、日常の中に「ヨロコビ」を生み出すブランド活動にも取り組む。趣味はアニメ鑑賞、少年野球コーチ。座右の銘は「心が動いたら即行動」。

(Hint-Pot編集部)