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「一番喜ばれた贈り物」とアメリカ人 日本で普及率82%の温水洗浄便座 TOTOが語る海外での意外なハードルとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

世界中の人を魅了している日本のトイレ【写真提供:TOTO】
世界中の人を魅了している日本のトイレ【写真提供:TOTO】

 多くの訪日外国人が「持ち帰りたい」と絶賛する日本のトイレ。快適性や機能性の高さが魅力で、海外でも高い関心を集めています。それほどの人気にもかかわらず、海外ではなぜ、あまり普及しないのか不思議です。そこで、TOTO株式会社海外事業統括本部の鈴木政行さんと古矢将人さんに、詳しいお話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

近年、アメリカでは2桁成長に

 日本で同社のウォシュレットが発売されたのは、1980年。その出荷台数は20年で30倍になり、いまや国内の温水洗浄便座の普及率は82%に達しているといいます。快適さは国内外で評価されていますが、海外ではまだまだ一般的ではありません。

「現在、当社では17か国38拠点で事業を展開しています。ただ、日本と同じように温水洗浄便座が一般的になるには、さまざまなハードルがある状態です。地道な活動を重ねるなか、アメリカでは2024年度のウォシュレット販売台数が前年比126%成長を記録するなど、その努力は実を結びつつあると感じています」

 そう話すのは、アメリカに8年ほど赴任した経験がある鈴木さん。海外で日本のトイレの普及が進まないのは、ある大きな要因があるそうです。

環境だけではない、文化や習慣のハードル

キャッチコピー「おしりだって、洗ってほしい。」がインパクトを与えた初代ウォシュレット【写真提供:TOTO】
キャッチコピー「おしりだって、洗ってほしい。」がインパクトを与えた初代ウォシュレット【写真提供:TOTO】

 環境的な課題はあるものの、それ以上に大きな壁になっているのは、文化や習慣の違いだそう。鈴木さんは「実は、おしりを水で洗う文化が根付いていないのが、一番大きいと感じます」と指摘します。

 日本で温水洗浄便座の認知が爆発的に広がったきっかけは、同社が1982年に展開したテレビコマーシャルや広告でした。コピーライター・仲畑貴志氏によるキャッチコピー「おしりだって、洗ってほしい。」が、大きなインパクトを与えたのです。

 それまでは排泄後、トイレットペーパーで拭き取るのが一般的でしたが、水を使って洗うという新たな発想が、やがて習慣として定着していきました。ただ、インドにも赴任経験を持つ古矢さんによると、世界にはおしりを水で洗う文化を持つ国が存在しているそう。

トイレットペーパーと便器の間にハンドシャワーが設置されている、インドのトイレ【写真:PIXTA】
トイレットペーパーと便器の間にハンドシャワーが設置されている、インドのトイレ【写真:PIXTA】

「イスラム教には、排泄後に水で洗わなければならない規範があります。そのため、イスラム教徒の多い中東やインドなどには、ハンドシャワーがトイレにあるのが一般的です。逆に、そうした文化がない国では、排泄のたびに『おしりを洗う』といった発想自体がありません」

 実は、アメリカでの普及活動の一環として、同社はニューヨークのタイムズスクエアの巨大広告を出そうとしました。日本での啓蒙活動で成功した「おしりを洗う」という発想を伝えたいと試みたのです。しかし、もちろん公序良俗に反するようなものではなかったものの、その広告はほどなく差し止めになってしまいました。鈴木さんは「ちょっとインパクトが大きすぎたかもしれません(笑)」と振り返ります。