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「一番喜ばれた贈り物」とアメリカ人 日本で普及率82%の温水洗浄便座 TOTOが語る海外での意外なハードルとは
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物理的な問題をクリアし進む普及

海外で日本のトイレがなかなか普及しない背景には、文化の違いだけでなく、ほかにもさまざまな要因があります。なかでもよく挙げられるのが、水質の問題です。たとえば、水の硬度が高いヨーロッパでは、洗浄ノズルが詰まりやすいという課題がありました。しかし、鈴木さんによると、この問題は解決済みだといいます。
同社はヨーロッパ仕様として、スケール(水アカの一種)除去機能を備えた製品を開発。硬水によるトラブルは、すでに支障がないそうです。その一方で、国や地域によって住宅設備や関連する法律が異なるなど、別のハードルもありました。
「アメリカではお風呂とトイレが一体になったバスルームが多いことから、コンセントを設置できない問題がありました。しかし、設備の安全性を向上させ、カリフォルニア州でバスルームの近くに電源を設置できるように。ほかの州でもこうした規制緩和が広がり、これまで新築以外では設置が難しかった環境も変わりつつあります」と鈴木さんは説明します。
「人を招いて披露したいといった心理に」

外国人が、日本で温かな便座や温水洗浄を使用し、その快適さに驚くことは少なくありません。実際に使ってもらうことが普及への近道と考え、同社は5つ星ホテルや空港への導入に加え、ショールームでの体験トイレといった、体験機会の拡大に力を入れているそう。
そのほかにも、著名人やインフルエンサーがSNSに感動を語る投稿が、大きな後押しになっています。また、パーティー文化があるアメリカやインドなどでは、自宅に温水洗浄トイレを設置することで、人に自慢できるステータスとして「ドヤれる」といった面もあるようです。
「日本では当たり前の自動開閉や自動洗浄ですが、初めて見る人には『アメージング』な体験。エンターテインメント性を感じるようで、人を招いて披露したいといった心理になる人も多いと感じます」と古矢さん。
もちろん、実際に体験した人の多くは「こんなに良いものだとは……」「癖になる」と、その快適さに魅了されています。自宅への設置だけでなく「高齢の親の家にプレゼントしたい」といった要望も多く、「一番喜ばれた贈り物だった」などの反響が寄せられているそうです。
一日に何度も使うトイレだからこそ、快適性が上がればQOL(生活の質)も大きく変わります。これまで、日本人だけが当たり前に享受してきた快適なトイレの存在が、世界のスタンダードになるのは、そう先のことではないようです。
(Hint-Pot編集部)