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からだ・美容

「妊活にブロッコリーとホウレン草が良い」って本当? 食生活で陥りがちな大きな誤解

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

ブロッコリーやホウレン草などに含まれる葉酸は、積極的にとりたい栄養素のひとつ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ブロッコリーやホウレン草などに含まれる葉酸は、積極的にとりたい栄養素のひとつ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 妊活に取り組むにあたり、食生活も気になるところです。よく「ブロッコリーやホウレン草が良い」など、妊娠に向けて食べておきたい食品や、必要な栄養素を見聞きしますが、実際はどうなのでしょうか。適切な食生活について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

どちらも妊娠時に必要な「葉酸」が豊富な野菜

 食事は、健康的な体づくりのための土台部分です。過度なダイエットや偏りすぎた食事は、妊活をしていくうえで、ホルモンバランスの乱れなど悪影響を及ぼすこともあります。だからこそ、「何を食べたら良いか」については気になるところでしょう。

 基本は1日3食、さまざまな食品から栄養バランスの取れた食事を取ることです。たんぱく質、脂質、炭水化物(糖質+食物繊維)、ビタミン、ミネラルの五大栄養素をしっかりとることは、健康な体づくりに役立ちます。そして、よく噛んで食べましょう。

 そのうえで、妊活中の女性が積極的に取り入れたい栄養素として「葉酸」が挙げられます。これは妊娠初期で、葉酸が赤ちゃんの神経系の発達に影響することがわかっているためです。厚生労働省は、妊娠の可能性がある人は葉酸のサプリメントなども取り入れるなど、1日400マイクログラムの追加摂取が望ましいとしています。

 葉酸は、緑黄色野菜や枝豆、納豆、イチゴなどに多く含まれています。「ブロッコリーやホウレン草が妊活に良い」といわれるのは、緑黄色野菜のひとつで、葉酸をはじめ鉄分やカルシウム、ビタミンCなど体を整える大切な栄養素があるためです。

葉酸を摂取すれば妊娠率が上がるわけではない

 しかし、ここで誤解されやすいのは「葉酸をとる=妊娠しやすくなる」という点です。葉酸は、妊娠が成立したあとに赤ちゃんの健やかな発育をサポートする栄養素であり、排卵や着床の確率を直接高めるものではありません。

 もうひとつ注意したいのが、「ブロッコリーやホウレン草さえ食べていれば安心」といった特定の食品に偏る食生活です。たとえ体に良いとされる食品であっても、それだけで健康を維持することは難しく、生きていくうえで必要なすべての栄養素をまかなうこともできません。

 繰り返しになりますが、妊活中の食生活で大切なのは、たんぱく質、脂質、炭水化物、鉄やカルシウムなどのミネラル、ビタミン類など、五大栄養素をまんべんなくとる食事をすることです。

たんぱく質、鉄、カルシウムが不足しないように意識

 とくに女性は、たんぱく質や鉄分、カルシウムが不足しやすいので、意識して食事に取り入れていきましょう。

 たんぱく質は、筋肉や血液、ホルモンなどあらゆる細胞の材料で、体づくりの基盤になります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、成人女性の1日の推奨量は50グラム。しかし実際には、痩せ願望が強い多くの女性が、たんぱく質を十分に摂取できていない傾向にあると指摘されています。肉や魚、大豆、大豆製品、卵などの主菜を必ず食べましょう。料理をするのが大変なときは、缶詰やレトルト食品、コンビニ食を活用するのも手です。

 貧血を防ぐ鉄分は、レバーや赤身の魚、大豆や鉄釜で製造されたヒジキなどに多く含まれています。ビタミンCを多く含む緑黄色野菜と一緒に食べると、吸収率が向上。骨や歯をつくるのに必要なカルシウムは、牛乳やチーズなどの乳製品、シラスやちりめんじゃこなどの小魚から摂取できます。カルシウムの吸収をサポートするビタミンDが含まれる、卵やキノコなどと一緒に食べるのもおすすめです。

 必要な栄養素を、さまざまな食品からまんべんなくとることで、互いの栄養の補足や相乗効果も期待できます。主食・主菜・副菜をそろえた、1日3回のバランスの良い食事を基本とすることが、妊活の食習慣で大切な一歩になるでしょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾