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仕事・人生

「結婚はしたい、でも名前が変わることで…」 女性経営者が選んだ“事実婚” 自身のキャリアとアイデンティティを守るための思い

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

株式会社ツアーデザイナーズ代表の宗像さん【写真提供:宗像愛】
株式会社ツアーデザイナーズ代表の宗像さん【写真提供:宗像愛】

 今や結婚や家族の形は、ひとつではありません。近年はそれぞれのスタイルを取るカップルが増えてきました。沖縄県で地域の伝統や知られざる魅力を観光ツアーとしてプランニングする会社を経営する宗像愛さんもそのひとり。男性パートナーとの「事実婚」を選び、昨年1月に第1子を出産しました。その選択に至るまでの思い、そして、暮らしの中で向き合ってきた現実について伺いました。

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「全国通訳案内士」を取得し沖縄で旅行業の会社を設立

 東京の高校を卒業後、カナダに留学した宗像さんは、帰国すると沖縄に移り住みインバウンド専門のダイビングショップで働きはじめます。国家資格である「全国通訳案内士」の資格を取得すると、2021年9月に「株式会社ツアーデザイナーズ」を設立しました。約9割のお客さんがインバウンド。単なる沖縄の観光地をガイドするのではなく「地域の方々とふれあいながらストーリーを紡いでいく」ことをテーマに、4人のスタッフと働いています。

 沖縄出身のパートナーもそのスタッフのひとり。知り合ってからの期間は長かったのですが、23年8月に“事実婚”という形で新しい人生をスタートさせました。婚姻届けを提出する「法律婚」ではなく、事実婚を提案したのは宗像さんからだったといいます。「彼は正直、びっくりしたと思います」と話します。それでも、事実婚を選んだのは宗像さんの生き方そのものが大きく関わっていたからです。

「私は私でありたい」 アイデンティティを守るための決断

「社会に出てから仕事が楽しくて、プライベートと両立するのは難しいなと。自分は結婚に向いていない、と感じていたのですが、パートナーと出会って、この人と一緒になりたいと自然に思えるようになりました。ただ、法律上の婚姻関係を考えたとき、自分が作ってきた“アイデンティティ”を失ってしまうのではないかと、大きな恐怖を感じたのです」

 アイデンティティ、すなわち「自分が自分であること」という考えは宗像さん自身、子どもの頃からぼんやりとあったそうです。しかし、はっきり認識したのは、カナダへの留学時でした。

「どこかに所属しているわけではない、一個人の“宗像愛”として扱ってくれたことが大きな経験だったと思います」といいます。そんな思いから「結婚はしたい。でも、名前が変わることで、自分が積み上げてきたキャリアがなくなってしまうのではないか……」と考えたとき、「私は私でありたい」と強く思うようになったといいます。

 とはいえ、今の日本は結婚したら「どちらかの姓を名乗る」必要があります。