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「結婚はしたい、でも名前が変わることで…」 女性経営者が選んだ“事実婚” 自身のキャリアとアイデンティティを守るための思い
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両親と対話 「少しずつ理解してもらえた」
自分が相手の姓を名乗ること、相手が自分の姓を名乗ることをそれぞれ想像してみたという宗像さん。しかし、一般的な家庭の長男であるパートナーに、自分の宗像姓を名乗らせることは難しいと感じました。だとしたら、互いのアイデンティティを大切にするために、法律婚にこだわる必要はないのではないか、と思ったそうです。「彼との話し合いは何度も、何度もしました。それこそ数年かかったでしょうか。今も納得しているかというと、少し分からないところもあるかもしれません」と打ち明けます。
理解を得てもらう必要があったのは、パートナーだけではありませんでした。互いの両親が親族にどう説明したらいいか悩んでいることも理解できました。それでも「自分たちにとって最適な形」であることを丁寧に話し、少しずつ理解してもらえたと感じています。「今でもどちらの両親にも100%納得してもらったとは思っていません。ただ両親は受け入れてくれ、彼のご両親も柔軟に考えてくださる方だったことがラッキーでした」と話します。
事実婚で、社会的な「壁」を感じることも
事実婚を親族に認められても、まだ社会的に難しい問題が多くあります。たとえば手術する際に求められる同意書へのサインができないケースがあるほか、共同での住宅ローンなども組みづらいとされています。また、宗像さんが最も不安に感じるのは、昨年1月に生まれた子どもの存在でした。
「いじめにあうのではないか」「不安にさせるのではないか」。前例が少なくネットでさまざまな情報を集めても「しなくて良い苦労をさせてしまうのではないか」と考えることもあったようです。
子どもが生まれると、周囲からはやはり「そろそろちゃんとしたら」と言われ、「正直へこたれそう」になったこともあったといいます。そんなとき知ったのが「胎児認知」という制度でした。現行法制上、子どもは「宗像姓」を名乗ることになります。婚姻関係がない男女間に子どもが生まれた場合には出産後に認知することもありますが、この制度なら身ごもったことが分かった時点で手続きを行えば、仮に出産前に相手が死亡するようなことがあっても認知ができます。
「大げさですけれど、ひとつの安心材料になりました。出産によって認められ、祝福されたという感じです」と新たな喜びを実感した瞬間になったそうです。こうして事実婚という選択でパートナーと子育てをしている宗像さん。次回は、経営者として事実婚を選んだことや、選択的夫婦別姓についての考えを伺います。
(芳賀 宏)
