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「ナスには栄養がない」は嘘? 調理前にやらないほうがいいこととは? 一緒に食べたほうがいいものを栄養士が解説
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教えてくれた人:和漢 歩実

煮ても、焼いても、揚げてもおいしいナス。ほとんどが水分のため「栄養がない」イメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。無駄なく栄養をとるコツとは? 栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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特有のポリフェノールを含むナス
ナスは約93%が水分のため、「栄養がない」と思われやすいですが、まったくないわけではありません。実際には、体内の余分な塩分を排出してむくみに有効なカリウムをはじめ、腸内環境を整えて便通を促す食物繊維、赤血球の生産を助ける葉酸も含まれています。
このほか、ポリフェノールの一種でアク成分のクロロゲン酸には抗酸化作用があり、生活習慣病や老化の予防が期待できます。また、紫色の皮部分は、ナス特有のナスニンと呼ばれるポリフェノールが豊富です。こちらも同じく抗酸化作用があります。
ほかの野菜と比べて、ずば抜けて栄養が豊富ではありませんが、旬でおいしい夏野菜のひとつ。上手に食卓へ取り入れましょう。
ナスの栄養を効率的にとるコツ3つ
ナスの栄養を効果的にとるコツは、次の通りです。
○皮ごと食べる
皮には、ナスニンや食物繊維が詰まっています。皮がついたまま調理しましょう。硬さが気になるときは、皮に切り込みを入れると食べやすくなります。
○長時間水に浸さない
ナスを長時間水に浸すと、ナスニンやカリウムなどの水溶性の栄養が流出します。無駄なくナスの栄養メリットを得たい場合は、アク抜きせずに調理することをおすすめします。ナスのアクのクロロゲン酸は、食べて問題ない成分です。炒め物や揚げ物など、変色が気にならない加熱調理や生で食べない場合、とくにアク抜きをする必要はありません。
○汁物の具材に使う
栄養を逃さないためには、ナスを皮ごと煮込んで、スープやみそ汁などの具材にするのが良いでしょう。汁ごと食べれば、溶け出た栄養成分も逃さず摂取できます。ナスもやわらかくなるので、食べやすいです。
ナスを揚げたり炒めたりすることで、油のコーティングが栄養を閉じ込めてくれるメリットがありますが、ナスは油を吸いやすい特徴があるため、高カロリーに。「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」によると、たとえば100グラムのナスは、生で18キロカロリーですが、油で炒めると73キロカロリー、天ぷらだと165キロカロリーに。ダイエット中の人は気をつけましょう。電子レンジを活用すると、水溶性の栄養を逃さず、油も使わないので、手軽でヘルシーです。
暑い季節にナスと合わせたい食品とは
ナスを、より栄養バランスを整える一皿にするならば、たんぱく質を多く含む食品と一緒に調理すると良いでしょう。たとえば今のような暑い季節は、疲労回復に役立つビタミンB1を多く含む豚肉、カルシウムや鉄などを含む厚揚げなどと合わせて、ミネラル豊富なみそで炒め物にするのがおすすめです。ナスは体を冷やす野菜といわれているので、体を温めるショウガやニンニク、ネギなども使うと、よりバランスが良くなります。
ナスは、緑黄色野菜ではなく、いわゆる淡色野菜に分類されます。そのため、βカロテンが少なめです。βカロテンは、必要時に体内でビタミンAになり、目や皮膚の粘膜を守ったり、免疫機能の維持をサポートしたりする役割があります。ニンジンやカボチャ、パブリカなどの色が濃い緑黄色野菜と一緒に調理すると、より栄養価が高まるでしょう。
調理法や食品との組み合わせで、栄養バランスの良い一品になります。夏の元気のために、工夫して取り入れてみましょう。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾
