からだ・美容
赤ちゃんの10人に1人は体外受精 日本の「生殖補助医療」について専門家に聞く
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教えてくれた人:小松原 千暁
採卵から、受精卵を子宮に戻すまで 治療のプロセスとは
採卵は、超音波で卵巣の位置を確認しながら卵胞に採卵針を刺し、卵胞内にある卵胞液ごと吸引して卵子を採取するのが一般的です。基本的には静脈麻酔をかけるので、痛みを感じることはありません。採取する卵子の数が少ないときは、局所麻酔や鎮痛剤のみの無麻酔などで行うこともあります。消毒した針を刺しますが、骨盤内感染の予防のために、抗生剤の点滴や内服の必要があります。通常は当日に帰宅でき、翌日の生活にも支障はありません。
採卵に伴うリスクとして挙げられるのは、膣壁出血、膀胱内出血、腹腔内出血です。重症の場合は、入院することも。麻酔に伴うリスクで考えられるのは、薬剤性ショック、血圧低下、呼吸停止、嘔吐などですが、心電図モニターや血圧測定などを用いて、早期発見と早期対応をしています。過度におそれず、疑問点などがあれば医師に確認しましょう。
採卵したら、体外で精子と受精させます。精子と卵子を混ぜ合わせたあと、卵管内と同じ環境にして受精を待つ体外受精法(IVF-ET)、精子を1匹だけ吸引し、卵子の細胞質内に注入して受精を待つ顕微授精法(ICSI)があります。
受精卵(胚)を予定日数まで培養し、グレード(生育状態)が良好な胚を移植します。医療施設によって異なりますが、細くてやわらかい子宮内移植カテーテル内に、基本1個の胚を少量の培養液とともに吸引し、超音波で観察しながら子宮内膜へそっと戻す方法が一般的です。数日後、移植された胚が子宮内膜に入り込み、細胞が増殖すれば着床が成立します。
胚移植した胚以外に、グレードの良好な胚は「余剰胚」として凍結保存しておくことができます。1回目の胚移植で妊娠できた場合は第2子の希望時に使用し、1回目で妊娠に至らなかった場合は次の治療に使用可能です。
1回の治療期間の目安は、排卵誘発の時期も入れて、移植まで最短で約2か月。採卵後に胚を凍結し、別の周期に胚移植する場合は約3~4か月です。一般不妊治療よりも1度の診察時間が長くなり、通院頻度も上がります。妊娠率が高く、1回目で妊娠する人もいますが、個人差があります。医師に相談しながら、パートナーとよく考えて治療方針を選択しましょう。
(Hint-Pot編集部)