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からだ・美容

保険適用可能なケースも…受精卵を凍結保存するメリット・デメリットとは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:小松原 千暁

生殖補助医療(ART)のひとつに、胚を凍結する治療法も(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
生殖補助医療(ART)のひとつに、胚を凍結する治療法も(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 生殖補助医療(以下、ART)とは、取り出した卵子と精子を体外で受精し、受精卵(胚)を培養したあと、子宮に移植して妊娠を目指す治療の総称です。このなかには、培養した胚を凍結保存する治療方法もあります。どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。不妊症看護認定看護師の小松原千暁さんに伺いました。

 ◇ ◇ ◇

受精卵は細胞分裂して胚になる

 採取した卵子と精子が、体外受精または顕微授精を経て受精卵になると、細胞分裂して「胚」と呼ばれる状態に成長します。受精卵すべてが胚に成長するとは限りません。一方で、1度の採卵で多くの卵子が採取されると、たくさんの胚ができることがあり、胚移植後に胚が残る場合もあります。

 このとき、すぐにまた胚移植するよりも、子宮の状態を整えてからのほうが良いと医師が判断することがあります。そのような場合に選択できるのが、胚を凍結保存する方法です。

 胚は、細胞分裂の状態によって、3つの成長プロセスに分けられます。受精後2~3日目の「初期胚(分割期胚)」、受精後4日目の「桑実胚」、受精後5~6日の「胚盤胞」です。一般的には、体外にいる時期が短い初期胚、または着床率が高いとされる胚盤胞を移植したり、凍結したりします。

 さらに、そのまま凍結せず移植する胚を「新鮮胚」、いったん凍結保存して、のちに融解させて移植する胚を「凍結胚」と呼びます。つまり、ARTで子宮へ移植する胚は、新鮮初期胚、新鮮胚盤胞、凍結初期胚、凍結胚盤胞の4種類。初期胚よりも胚盤胞、新鮮胚よりも凍結胚のほうが着床率が高いといわれますが、胚移植のタイミングや凍結の可否は、医師や胚培養士が総合的に判断して決定します。

凍結で体への負担を減らし、子宮を整える期間を得る

 胚を凍結保存するケースには、2つあります。まず余剰胚凍結です。胚が複数できた場合、移植する胚以外の余剰胚を凍結保存することで、採卵の回数を減らせるメリットがあります。採卵は排卵誘発剤を使用するため、体への負担があり、回数は少ないほうが良いでしょう。また、2人目の子どもが欲しい場合は、1人目のときの余剰胚を凍結保存しておけば、数年後に胚を融解させて、胚移植を行う治療から再開できる利点があります。

 全胚凍結は、採卵後に新鮮胚移植を行わず、すべての胚を凍結することで、着床に適した周期に移植できるメリットがあります。採卵の周期は、排卵誘発剤によって卵巣が腫れることや、排卵抑制剤によって子宮内膜が早期に排卵後の状態になることがあり、移植に適さない可能性も低くありません。得た胚を凍結することで、卵巣が正常の大きさに戻り、卵巣と子宮が正常なホルモン機能に戻る期間を確保できることも大きなメリットです。着床に適した状態になった周期で、移植を行うことができます。