Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

カルチャー

「器は額縁、お料理は絵」 京都の古美術店店主が教える 初めての骨董にふさわしい器とは

公開日:  /  更新日:

著者:豊嶋 操

古伊万里の特徴「唐草模様」 時代とともに変化

――確かに。唐草模様も古伊万里の特徴ですよね。以前、外国人観光客と獅子舞を見た時、緑に白い唐草の獅子の衣装を見て「あの模様、ギリシャ発祥の模様と同じじゃない?」と聞かれたことを思い出しました。

「そうです。ルーツはそこで合っています。古伊万里の唐草模様といえば、花唐草と蛸唐草ですね。唐草模様の面白いところは、時代が下るにつれて段々模様が簡素化していくところなんですよ。最初は丁寧に細かく描かれていた模様が寛政期(1789~)に量産化され出すと、どんどんシンプルな模様になるんですよね。萩唐草も元々は花唐草といって花も描かれていたのですが、いつも間にか花は取れて葉と蔓だけになりました。時代とともにもっと簡略化された『みじん唐草』という模様に変わっていきます」

――世相を反映した唐草トランスフォーメーション、これは興味深いですね。

「唐草って模様がみっちりでインパクトが大きいのですが、不思議なことにお料理を盛ると見事に調和するんです。(とくにお皿などの)器は、真ん中じゃなくて額縁にあたる周辺部分をよく見ると良いですよ。『器は額縁、お料理は絵』ですね」

――至極納得! ところで夏の食卓によくのぼるお料理って何ですか?

「やっぱり夏は鱧です。骨切済の鱧を買って来て鱧しゃぶでいただきます。定番の梅肉醤油の他に濃い目のお出汁でいただくこともありますね。あとは冷奴は子どもの頃から毎日食べているかなぁ。うちはごま油で炒ったじゃこを乗せて食べていました。ここだけではないと思いますが、昔はこの辺りに何軒もお豆腐屋さんがあったり、豆腐売りの人が居ましたね。近頃気に入っているのはマグロとオクラ、それから叩いた長芋の和え物です」

 集めたり、飾ったりすることも骨董の楽しみ方の一つですが、実際に食卓で使ってみると、その魅力はまた違った姿を見せてくれるでしょう。

(豊嶋 操)