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お出かけ

添乗員が語る外国人観光客のリアル 自由すぎる行動や時間感覚に戸惑いながら学んだこととは

公開日:  /  更新日:

著者:Ana

集団行動でも「自由」が基本

 日本人のお客さまに添乗すると、多くの方は自然と“集団での行動ルール”を守ってくださいます。たとえば、観光地に到着しても「まずは添乗員やガイドの案内を聞こう」と一度足を止めたり、ほかの人の様子を見たりして、暗黙のうちに「周囲に合わせよう」という意識が共有されているのです。

 一方で、今回のアメリカ在住のお客さまは、実に自由。ランチの際、添乗員はたいてい、別室で食事を取りながら様子を見ています。終わりかけの頃にこのあとの案内を伝えよう……と、しばらくして部屋に行ったところ、早く食べ終わった人が店を出てしまって、すでにいないということもありました。「一緒に行動する」というより「自分のやることが終わったら次へ」というスタイルが当たり前のようでした。

 日本では「全員が足並みをそろえる」ことが当たり前ですが、海外では「それぞれが自分のペースで行動する」ことが自然。それを尊重するからこそ、周囲もあまり気にしない――そんな違いがあるのだと思います。

時間感覚も違う

 ツアーをスムーズに進めるうえで大切なのが「時間」です。日本のお客さまに「10時に出発です」とお伝えすれば、ほとんどの方が5分前にはロビーに集合してくださいます。むしろ「5分前集合が当たり前」という空気すらあるでしょうか。

 ところが、「10時出発なので、5分前にはロビーに来てくださいね」と海外のお客さまに伝えても、バスにやってくるのは10時ぴったり。そこから荷物を積み込むので、10時発は当然、不可能です。最初は戸惑いましたが、感覚の違いと気づいてから、集合時間を少し早めに伝えるよう工夫。10分早く伝えておけば、なんとかオンタイムに出発できました。

 ただ、これも全員が遅いわけではありません。ある一組のカップルだけは、いつも集合時間の5分前くらいには来ていて「私たちは遅れるのが嫌だから。でも、だいたいアメリカ人は時間に適当よね」と。

 日本では「時間を守らない=他人に迷惑をかける」と考える傾向が強いですが、海外では「自分がどうするか」が重視されるのでしょう。他人が遅れても「自分は自分」で、あまり気にしない。どちらが良い悪いではなく、単なる違いと捉えているのだと感じました。

 日本人にとって当たり前のことが、海外の人にとっては当たり前ではない。価値観や習慣よりももっと奥深いところにある、感覚や認識の違いに改めて気づかされました。その差に驚かされ、ときに困らされつつも、大きな学びを得られた経験だったと思います。

(Ana)

Ana(アナ)

旅アドバイザー&トラベルライター。学生時代から海外旅行に魅了され、これまで世界約50か国をめぐってきた大の旅好きで、海外添乗員として活動していた経験もある。行った旅の数と比例して、経験してきたトラブルや事件は数知れず。コロナ禍を経て、再び海外へ飛びながら旅に役立つ情報、異文化を楽しむ知恵などを日々発信中。