仕事・人生
「絶対にあんなふうにはしたくない」 47歳でパパになった元L⇔R黒沢秀樹さん 父を反面教師に“新しい父親像”を探して
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「おでかけひろば」で見えた父親たちの孤独

また、育児に深く関わるなかで、ほかのお父さんたちを取り巻く状況についても、考えることが増えました。そのきっかけは、ママ友に「秀樹さん、おいでよ」と誘われ、親子で参加できる世田谷区の「おでかけひろば」に顔を出すようになったこと。
初回こそ、男性は自分ひとりという状況に、少しばかり居心地の悪さを感じていたそうですが、運営スタッフの方々が「もっとお父さんたちにも来てほしい」と温かく迎えてくれ、すぐに抵抗感は薄れていきました。
そうして通っているうちに、ほかのお父さんの参加者を見かけるように。しかし、お母さんたちはすぐに寄り合いになる一方で、お父さんたちはスマートフォンを見るなど、ひとりで過ごす人が多かったそうです。
「お父さんたちって、放っておいても、なかなか話しにくいみたいなんです。そこで、そうしたお父さんたちがつながれるように“疑似パパカフェ”って感じで、コーヒーをいれるようになりました。もちろん無料で。わざわざ時間がかかるように豆からひいて、『コーヒー好きですか?』って話していると、お父さん同士がちょっと会話をするようになって」
こうした活動の背景には、黒沢さん自身の体験もありました。それは、育児中の孤独感。「自分も育児うつのような瞬間は、少なからずあったと思います」と振り返ります。
「男性の育児うつも、女性と同程度といわれています。仕事を頑張らなきゃというプレッシャーがあり、父親という全然違う新しい役割も求められる。これじゃ追い詰められて当然ですよ」
子どもが生まれた2018年当時と比べて、育児をする男性が増えていることを実感しているという黒沢さん。「もうちょっとお父さんたちもつながれる場所があったり、きっかけがあったりすればいいのになって思います。それに、企業側も育休制度の導入とともに、もっと深くまで学んでいく必要があるでしょう」と話します。
現代の父親たちが直面する課題は、決して個人の問題ではありません。黒沢さんは、もっと多くのお父さん、お母さんたちが楽しく育児に取り組め、明るい未来を想像できる社会になることを願っています。
1970年8月28日生まれ。1991年、L⇔Rのギタリストとしてミニアルバム「L」でデビュー。1995年のシングル「KNOCKIN’ ON YOUR DOOR」の売り上げ枚数は134万枚。文芸ポータルサイト「ホテル暴風雨」で連載した育児ノート「できれば楽しく育てたい」シリーズを出版。ミュージシャン、コンポーザー、音楽プロデューサー、執筆家、心理カウンセラーなど、幅広く活躍している。
(Hint-Pot編集部)