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からだ・美容

風邪と勘違いしやすい秋の花粉症 鼻毛を切るとかかりやすい? 知っておきたい今すぐできる対応策を医師が解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:千原 真未

春に使った花粉症の薬は秋にも有効?

 春に加えて、秋も花粉症の症状に悩んでいる人のなかには「春に買った市販薬や、病院で処方された薬で緩和したい」という人も多いでしょう。

 春に処方された花粉症の薬は、同じような症状であれば秋にも使える場合があります。抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などは、花粉の種類に関係なく「症状」に合わせて処方されるため、再使用できることが多いです。ただし、開封済みの点鼻薬や目薬は、衛生面から鑑みて、再使用を避けましょう。開封後1~2か月を過ぎた薬は、雑菌繁殖や成分劣化の恐れがあります。

 また、症状の出方が春と違う場合(咳やのどの違和感が強いなど)は、別のアレルギーや感染症が関係している可能性もあります。そのため、自己判断での使用は控え、医師・薬剤師に相談するのが安心です。

よく見聞きする「花粉症対策」の有効度とは?

 日常でできる「花粉症対策」として、よく見聞きする6つの対策について、それぞれ有効度合いを、有効度が高い順で「◎」「◯」「△」の3段階で表してみます。

・「マスクをつける」……◎
 マスクは、物理的バリアとして花粉粒子を遮る効果が高いとする研究が複数あります。たとえば高性能マスクをつけることによって、鼻やのどへの花粉侵入を抑え、症状を軽くするという報告もあります。

・「天気予報をチェックする」……◯
 花粉飛散は天候に大きく左右されるもの。とくに「前日が雨で乾燥して風が強い日」は、地面に落ちていた花粉が舞い上がりやすい傾向にあります。ただし、地域、風向き、地形などにも左右されるため、確実とは言えません。

・「玄関先で服にブラッシング&手洗いと洗顔」……◎
 花粉は衣服や髪、肌に付着しやすく、そのまま家の中に持ち込むと、室内飛散源となります。帰宅直後の除去行動は、花粉量を減らすのに非常に効果的です。

・「拭き掃除をする」……◯
 室内に入った花粉を拭き取って減らすことは、合理的です。湿った布で拭くなどの方法が望ましく、乾いた掃除だけでは、逆に花粉が舞いやすくなってしまいます。

・「乳酸菌を取る」……△
 近年の研究では、プロバイオティクス(乳酸菌など)が、アレルギー反応に与える影響が検討されています。「予防あるいは症状軽減に効果あり」という結論は、菌株・被験者条件などでばらつきが大きく、まだ決定的ではありません。

・「鼻毛を切りすぎない」……△
 鼻毛には「吸着捕捉機能(大きめの粒子を捕まえるバリア的役割)がある」という考え方があります。ただし、花粉のような比較的大きな粒子に対して効果が及ぶかどうかは、不明な点も。あまりに過度な期待は、禁物です。

医師がすすめる日常的な対策とは

 上記以外に、おすすめしたい花粉症対策があります。それは「空気清浄機の使用」と「予防的治療の開始」の2つです。

 まず空気清浄機についてですが、秋の花粉症対策としては、基本を徹底することが何より大切です。たとえば、室内ではHEPAフィルター(編集部注:空気中の花粉やホコリ、ウイルスといった微粒子をキャッチできる、高性能なエアフィルターのこと)付きの空気清浄機を活用し、窓の開閉を控えるだけでも、花粉の侵入を大きく減らせます。ほかに、帰宅後の鼻うがい(生理食塩水による鼻洗浄)も、鼻腔内に付着した花粉を物理的に洗い流せる有効な方法です。

 次に、予防的治療についてです。花粉の飛散が始まる前から、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬を使い始める治療で、これもおすすめです。症状が出てから慌てて服用するより、早めに炎症を抑えておくほうが、シーズン全体を通して楽に過ごせます。

 秋の花粉症は、風邪や寒暖差と見分けにくいこともあります。季節の変わり目こそ、正しい知識をもって早めに対策し、快適に乗り切りましょう。

(Hint-Pot編集部)

千原 真未(ちはら・まみ)

日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医、医学博士。皮膚科だけではなく、内科・アレルギー科など、プライマリーケアを実践。大学病院で診療と研究に従事した経験を基に、質の高い医療情報の啓蒙を目指し、日々、さらなる研鑽に努めている。対面でもオンラインでも診療が可能な「クリニックフォア」で、皮膚科専門医としても活動中。