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柿を食べすぎてはいけない理由とは 1日の適量や栄養メリットを管理栄養士に聞いた
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教えてくれた人:藤田 えみこ

おいしいものがたくさん出回る実りの秋。柿も、そのひとつでしょう。味だけでなく、昔から「柿が赤くなると医者が青くなる」といわれるほど、栄養面でも優れた果物ですが、食べすぎると体への影響もあるようです。10月26日は「柿の日」。記念日にちなみ、柿について、管理栄養士の藤田えみこさんに伺いました。
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食べすぎは下痢や便秘を引き起こすことも
甘くておいしい柿は、食べやすく、つい手が伸びてしまいますが、食べすぎには注意が必要です。その理由は、次の2つが考えられます。
1つめは、「糖質のとりすぎ」です。柿は、果物の中でも糖質量が多い部類です。可食部100グラムあたりの糖質は16グラム前後。柿(中サイズ、約200グラム)1個を食べたとすると、一般的なおにぎり1個のごはん(約100グラム)を食べたときとほぼ同じ糖質量になります。柿には、意外にも糖質が多く含まれているのです。
2つめは、「下痢や便秘」です。柿は食物繊維が豊富で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方が含まれています。適量であれば、食物繊維は便の排出を促し、腸内環境を整える効果が期待できますが、とりすぎると逆効果に。下痢や便秘を引き起こしやすくなります。
また柿の渋み成分のタンニンは腸のぜん動運動を低下させるため、過剰に摂取すると便秘の原因に。水分も多いので、冷えやすい方や胃腸の働きが弱い方は、常温に戻してから適量を食べるようにしましょう。
1日2~3個といった“つい食べすぎ”を続けると、血糖値の急上昇、中性脂肪の上昇、エネルギー過多による体重増加、お腹の不調といった影響が出やすくなります。柿は、「食後のデザートとして1日1個まで」を目安に楽しみましょう。糖尿病・脂質異常症などで血糖コントロールが必要な方は、半分(約100グラム)程度にしておくと安心です。
「二日酔いの朝に柿」といわれる理由
適量を楽しめば、柿は優れた栄養メリットがある果物です。たとえば、前述のタンニンも、強力な抗酸化作用を持つポリフェノールの一種。「二日酔いの朝に柿」といわれるのは、このタンニンをはじめ、ビタミンCやカリウムがアルコールの代謝をサポートし、むくみや倦怠感を和らげる効果が期待できるためです。
柿のビタミンCは、果物のなかでもトップクラスの含有量です。アルコールの代謝だけではなく、美肌や免疫機能を高めるのに欠かせません。加えて、ビタミンAも多く、必要時にβカロテンに変わり、目の健康、皮膚や鼻の粘膜を保護し、体を守ります。このほか、食物繊維もたっぷり含みます。
「柿が赤くなると医者が青くなる」との言い伝えは、このような柿の高い栄養メリットを物語っています。乾燥や寒暖差で体調を崩しやすい、この時期にぴったりの果物といえるでしょう。
おいしく、賢く柿を楽しむコツ
保存する際は、「ヘタ」がポイントです。柿は、ヘタ部分から水分が抜けやすく、ここから乾燥や傷みが進むことがあります。保存するときは、ヘタを下にしておくと、水分の蒸発を防ぎ、新鮮さをキープすることができます。
長持ちさせたい場合は、冷蔵庫の野菜室で保存するのが良いでしょう。水で濡らしたキッチンペーパーをヘタにあて、ヘタを下にしてポリ袋に入れて保存します。早めに完熟させたい場合は、リンゴと一緒に袋に入れて保存すると、リンゴが発するエチレンガスの作用で追熟が促されます。熟しすぎたものは、冷凍するとシャーベット状になり、また違った味わいを楽しめるでしょう。
柿は、そのまま食べてもおいしいですが、ヨーグルトやチーズ、牛乳などの乳製品と合わせるのもおすすめです。乳製品のたんぱく質や脂質が、βカロテンの吸収を高めてくれます。またビタミンCは、植物性食品に含まれる鉄(非ヘム鉄)の吸収を助ける働きがあります。ホウレン草など鉄分を多く含む食材と合わせると良いでしょう。柿にチーズやホウレン草を合わせたサラダにすると、栄養バランスの良い一品になります。
適量を賢く、秋の味覚をおいしく食べましょう。
(Hint-Pot編集部)

藤田 えみこ(ふじた・えみこ)
管理栄養士。女子栄養大学卒業後、教育や医療・介護の現場の献立開発に携わる。結婚後、地元山口県へUターン移住。出産・育児を経て、栄養と献立を伝える現場へ転職。コロナ禍をきっかけにオンラインにて料理講師としての活動をスタート。痩せにくい世代へのダイエットメニュー、災害時に役立つ防災食講座などが人気。健やかな体作りのために、栄養や調理など食の知恵を発信する。2児の母。
インスタグラム:jitan.eiyo
