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「引退馬と呼ばない未来へ」の旗手 ヴェルサイユリゾートファームが示す、功労馬の“サードキャリア”と認知度向上の軌跡

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・瀬谷 宏

2002年の日本ダービーを制したタニノギムレット【写真提供:ヴェルサイユリゾートファーム】
2002年の日本ダービーを制したタニノギムレット【写真提供:ヴェルサイユリゾートファーム】

 10月から始まったTBS系ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」の舞台となっている、北海道・日高。その地にある「Yogiboヴェルサイユリゾートファーム」は、競走馬を引退した功労馬たちの受け入れ先として、近年大きな注目を集める存在です。雄大な自然に囲まれた牧場で、50頭を超える馬たちが“第三の馬生”を謳歌しています。代表を務める岩崎崇文さんが掲げる「#引退馬と呼ばせない未来へ」というスローガンには、どんな思いが込められているのでしょうか。急成長を遂げる牧場の“今”と、馬を取り巻く環境の変化について伺いました。

 ◇ ◇ ◇

3年で5倍に増加 急成長する牧場の“今”

 2018年に始まったヴェルサイユリゾートファームの「#引退馬と呼ばせない未来へ」の取り組みは、この7年で大きく発展しました。3年前に取材をしたときは十数頭だった預託馬も、現在は50頭を超えています。馬房の増設や設備投資が進み、スタッフの人数も大幅に増えました。

「環境は大きく変わりました。みなさん、興味を持ってくれるようになって」

 岩崎さんの言葉には、確かな手ごたえが感じられました。実際、日本中央競馬会(JRA)も視察に訪れるなど、競馬界からの注目も高まっています。

 さらに、競馬の世界を舞台にしたドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」の第1回放送後のミニ番組で同牧場が紹介され、SNSでも大きな話題に。来場者数も右肩上がりで、1日に100人を超える日も珍しくありません。

「無職じゃない」 スローガンに込めた思い

YogiboのCMでもおなじみになったアドマイヤジャパン【写真提供:ヴェルサイユリゾートファーム】
YogiboのCMでもおなじみになったアドマイヤジャパン【写真提供:ヴェルサイユリゾートファーム】

 同牧場の公式サイトやSNSで頻繁に見られる「#引退馬と呼ばせない未来へ」という言葉。このスローガンには、岩崎さんの強い思いが込められています。

「人間が仕事を離れてリタイアしたときと同じように、馬の場合も、競走馬や種牡馬生活が終わればどこへ行っても、どんな場面でも『無職』といわれてしまう。でも、そんな呼ばれ方は好きではないんです」

 競走馬として現役を終えた馬たちは、確かに“引退”しています。しかし、ヴェルサイユリゾートファームでは、彼らに新しい役割を与えています。観光牧場でのふれあい、フォトウェディングへの参加、癒やしの提供など、立派なセカンドキャリア、いやサードキャリアを歩んでいるのです。

「無職じゃないのに」

 岩崎さんのこのひと言が、スローガンの真意を端的に表しています。