仕事・人生
ドラマで憧れた警察官の夢へ 英語は“赤点常連”だった日本人女性がアメリカ留学で得た自信
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英語で外国人の対応をすることも
そんな明日美さんが得意だったのは、調書の作成。「被疑者の供述調書や被害者調書などを(業界用語で)“巻く”のがけっこう好きで、上司から『読みやすいよ』と褒められることもありました。文章を書くことが好きだったのもありますが、相手の言動から気持ちを読み解いていけたからだと思います」と、心理学が役に立ちました。
事件やトラブルの現場では、興奮した相手と話さなければいけないケースも少なくありません。あるご近所トラブルで、苦労した記憶があるそうです。
「少し精神障害を抱えていらっしゃる方で、話を伺っても、興奮して二転三転してしまうので、どれが真相なのかを見極めるのが難しい。そこで、まずはメモを取らず、会話するなかで信頼関係を築いて、なんとか時間ギリギリで調書をまとめることができ、課長から『良かったじゃないか』と評価してもらえました」
また、警察官の職務では外国人と向き合うこともあります。英語圏の人の場合、明日美さんが通訳人兼取調官となることもありました。英語圏以外の人だと、不利益がないよう、正式な取り調べでは通訳が派遣されますが「ちょっとしたトラブルなどでは、私が通訳として行くこともありました」と自身のスキルを生かすことができたそうです。
警察官から新たな挑戦 転機となった決断
テレビで見ていたプロファイラー像とは、少し違いました。それでも、学んできた心理学や英語が役に立つ刑事としての仕事は、楽しかったそうです。
しかし、刑事生活最後の1年半を過ごした機動捜査隊は日々、事件発生に備えて緊張し、体力的に厳しかったのも事実。また、警察官という仕事に誇りを持ちながら「交番勤務のときなど、酔っ払い相手やけんか腰の人も少なくないですし、『女はすっこんでいろ』なんて言われたことも……。やっぱり、少しでも『ありがとう』と言われる職業がいいなと感じていました」と明かします。
さらに、出身地の福岡県に残してきた高齢の両親のことも気がかりになったとき、6年半勤めた警察を辞める決断をしたのです。
こうして、6年半にわたる警察官としての人生に、ひと区切りをつけた明日美さん。その後、意外な分野で新たなキャリアを築いていくことになります。後編では、転身の理由や、現在の仕事に生きる警察官時代の経験について伺います。
(芳賀 宏)
芳賀 宏(はが・ひろし)
千葉県出身。都内の大学卒業後、1991年に産経新聞社へ入社。産経新聞、サンケイスポーツ、夕刊フジなど社内の媒体を渡り歩き、オウム真理教事件や警視庁捜査一課などの事件取材をはじめ、プロ野球、サッカー、ラグビーなどスポーツ取材に長く従事。2019年、28年間務めた産経新聞社を早期退職。プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)で広報を担当したのち、2021年5月から「地域おこし協力隊」として長野県立科町に移住した。
