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仕事・人生

「嫌われることはあっても、好かれることはない」 元女性刑事の新たな挑戦 「ありがとう」と言われる環境を求めた指導の原点

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

警察官を経て、現在はイングリッシュコンサルタントとして働く隈明日美さん【写真提供:隈明日美】
警察官を経て、現在はイングリッシュコンサルタントとして働く隈明日美さん【写真提供:隈明日美】

 ビジネス英語やTOEICなどで高得点を目指す人たちの、英語学習をサポートするコンサルタントとして活躍する隈明日美さん。“女性刑事”という異色の経歴から、高いスキルを持つコンサルタントに転身した理由はなんだったのでしょうか? また警察官時代の経験が今も役に立っていることとは? さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。後編は現在の仕事、将来について伺いました。

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「ありがとう」と言われる仕事を求めて

 留学したアメリカの大学で学んだプロファイリング能力や心理学を駆使し、警察官として、捜査や犯人検挙の一端を担ってきた明日美さん。しかし、仕事の体力的な厳しさに加え、「嫌われることはあっても、好かれることはない」と感じるようになりました。そして故郷の福岡県に残してきた両親への思いが、次に進む一歩につながったのです。

「自分のやりたいことをやろう」と、辞めたあとに就いたのはヨガインストラクターの仕事でした。「刑事最後の1年間くらいは精神的にも大変で、そのときに息抜きになったのがヨガのレッスンだったのです」と振り返ります。

 東京でインストラクターをしていた知人の会社に空きが出たと聞き、飛び込みで応募。管理職をしながら資格を取りました。「ヨガを教える仕事なら『ありがとう』と言ってもらえると思ったのもありますね」と笑います。

 それから3年ほど経ったころ、両親から「戻ってきてほしい」と連絡があり、地元の福岡県に戻ることに。急なことで転職先を見つけることが大変だったのですが、「営業スキルを身につけるのも良いかもしれない」と自宅近くで中古車販売の営業職に転職しました。

 しかし「自分は英語を使いたい」という思いに気づき、「面白そうだな」と求人で知った今の会社「TORAIZ(トライズ)」の英語コンサルタントに転身。新しいキャリア人生がスタートしました。

過去のキャリアが生きている英語コンサルティング

 現在は13人の受講生をサポート。年齢も10代から60代、ビジネス英語を学びたい人からTOEICやTOEFLでスコアアップを目指す人たちまでさまざま。ビジネス英語を学ぶ方が多いようですが、なかには「旅行を楽しみたい」という目的で学んでいる60代の受講生もいるそうです。

「英語がうまくなりたい、話せるようになりたいという方々に、どういう教材を使って、どのように学習を進めていくかをプランニングして、サポートするのが仕事です。コーチングは、その方の本質を質問しながら引き出していくところがあるんです」と話す明日美さん。その指導には、心理学で学んだ知識や警察官としての経験がいかされているようです。

「英語を学ぶ方の多くが実際は何がやりたいのか、そのゴールがあやふやなことが多い。そこが明確にならないとモチベーション管理が難しいのです。ですから最初の2時間くらいはたくさん質問をさせていただくんですよ。なかなか自己開示をしたがらない方もいます。質問をすることによって本質を導いていくのは、心理学がいかせるところかなと思っています」