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年末年始に体調不良 以前もらった薬を飲んでも良い? 救急医が警告する危険なケースと正しい対処法
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教えてくれた人:林 裕章

年末年始は、多くの医療機関が休診となります。そんなタイミングで体調を崩してしまい、以前、同じような症状で処方してもらった薬が残っているから、飲んでしまおうと考える人もいるかもしれません。しかし、これは安全なのでしょうか。救急や総合診療の経験が豊富な、林外科・内科クリニック理事長の林裕章医師に、年末年始に具合が悪くなった際の正しい対処法について、教えていただきました。
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似た症状でも原因が異なる可能性が高い
結論から言うと、以前処方された薬を自己判断で服用するのは非常に危険です。最大の理由は、似た症状でも原因が異なる可能性が高いから。たとえば胃が痛いと思っても、以前は胃炎だったものが、今回は虫垂炎(盲腸)や胆石である可能性がありますし、心筋梗塞ということもあります。
救急の現場では、胃薬の残薬を飲んで痛みをごまかしてしまった結果、虫垂が破裂して腹膜炎を起こし、緊急手術に至った事例も少なくありません。また、処方薬はそのときの、その人の体重や肝臓・腎臓の機能に合わせて調整されたものです。時間が経って体の状態が変わっている場合、副作用のリスクも高まります。
抗生物質や、インフルエンザ時の解熱剤はとくに注意
古い薬を飲んではいけないケースとして、とくに注意すべきは以下の2点です。
○抗生物質(抗菌薬)
風邪=抗生物質と誤解されがちですが、風邪の多くはウイルス性。細菌を殺す抗生物質は、インフルエンザや風邪に効きません。中途半端に飲むと、薬が効かない耐性菌を生み出す原因になるので絶対に避けてください。
○解熱鎮痛剤(NSAIDs)
ロキソプロフェンやボルタレンなどは強力ですが、インフルエンザの際に使用すると、まれにインフルエンザ脳症のリスクを高めます(とくに小児で注意が必要)。
また、粉薬やシロップは湿気を吸いやすく、品質が劣化している可能性が高いため、期間が空いているものは廃棄すべきです。一部の薬では、成分変性による腎障害などの報告もあります。
市販薬は今ある一番つらい症状に絞る
また、市販薬でも注意が必要です。たとえば熱や咳、鼻水を止める総合感冒薬など、広く浅く効くように、市販薬は複数の成分が配合されていることが多いのが特徴です。
選び方のポイントは、今ある一番つらい症状に絞ることです。
○熱・頭痛だけなら:単一成分の解熱鎮痛剤
○のどの痛みだけなら:トラネキサム酸配合の薬
あれもこれもと欲張って、総合感冒薬と頭痛薬などを併用すると、成分が重複して過剰摂取(オーバードーズ)になる危険があります。自己判断で複数を重ね飲みしない、わからなければ薬剤師に相談が大原則です。