からだ・美容
年越しそばやお雑煮…温かいものを食べたときに出る鼻水は病気のサイン? 気になる“正体”を医師に聞いた
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教えてくれた人:林 裕章

年末年始に、年越しそばやお雑煮を食べる人は多いでしょう。しかし、そうした温かい料理を食べていたら、風邪でもないのに鼻水が出てくることも。いったい、なぜなのでしょうか。温かい食べ物と鼻水の関係について、林外科・内科クリニック理事長で日本外科学会外科専門医の林裕章先生に伺いました。
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鼻水が出るのは、体を守る「防御反応」
温かいものを食べたときに鼻水が出るのは、体に備わった自然な反応です。この現象は「味覚性鼻炎」と呼ばれています。
熱い蒸気やスープが口や鼻に入ると、口腔内や鼻の粘膜にある感覚神経(三叉神経)が「熱刺激」を受け取ります。その情報が脳に伝わると、脳は体を守ろうとして、リラックスや分泌を司る「副交感神経」を活発にする指令を出すのです。
副交感神経が優位になると、鼻の粘膜の血管が広がり、粘液(鼻水)の分泌が促進されます。これは本来、熱すぎるものや刺激物が体内に入るのを防いだり、粘膜を保護したりするための「防御反応」というもの。その結果、サラサラとした鼻水が出てくるのです。
風邪や花粉症の鼻水とは何が違う?
味覚性鼻炎の鼻水は、風邪や花粉症のときに出るものと、成分や性質が少し異なります。主に水と微量のムチンから構成され、細菌やウイルス、炎症細胞を含みません。透明で、非常にサラサラしています。涙に近い性質を持っているため、いわば「鼻が流す生理的な涙」のようなものです。
一方、風邪や副鼻腔炎の鼻水は、ウイルスや細菌の死骸、白血球などが含まれるため粘り気があり、黄色や緑色になることもあります。花粉症の鼻水は透明でサラサラですが、炎症物質が含まれ、かゆみや粘膜の腫れを伴うのが特徴です。
ほとんどは体質によるもの 症状によっては別の病気のリスクも
味覚性鼻炎の鼻水は、ほとんどの場合が体質(反射が強いタイプ)によるものです。体調、鼻粘膜の状態、加齢、鼻炎の有無で変わってきますが、神経反射の“癖”に近いので、慣れて改善することはほとんどありません。これは筋トレのように鍛えられるものではなく、備わっている「反射機能」だからです。
したがって、温かいものを食べると鼻水が出てくることが重大な病気である可能性は、かなり低いと考えて良いです。ただし、症状によっては別の病気が隠れている可能性もあります。
・鼻水や鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみが常に伴う→アレルギー性鼻炎など
・片方の鼻だけ常につまったり、鼻水が出たりする→鼻中隔弯曲症やポリープなど
・黄色や緑色のドロッとした鼻水が出る→副鼻腔炎(蓄膿症)
・鼻水だけでなく咳や痰、発熱、倦怠感がある→風邪や感染症
鼻水という共通点から「花粉症の人は、温かいものを食べると鼻水が出やすいのでは?」と思うかもしれません。アレルギー性鼻炎などで鼻粘膜が過敏になっていると、温度や刺激に対する反応が強く出て「食事で鼻水が出やすい」と感じることは、理屈ではあり得ます。ただ、味覚性鼻炎は非アレルギー性(免疫反応ではない)とも説明されるため、「花粉症だから出る」とまでは言い切れません。