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夫を襲った“恐怖感”の正体 実録・男性の更年期 ラブラブ夫婦に起きた捉え方の「ズレ」

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

男性にとって性生活は「自己確認の手段」でもある

 仲良しだった夫妻。でも、智紀さんの“変化”のとらえ方は違ったようです。ここで、夫の智紀さん1人から話を聞くことにしました。

「EDになってからも妻は変わらず優しく愛らしく、寝る時に手をつないで寝てくれるようになりました。でも……でも、違うんです。妻の愛情が他の誰かに移るんじゃないかとか、そういうことを心配しているわけでもなく、愛情を確かめ合うためだけに行為をしてきたわけじゃないんです。それこそ、こんなことを言うと最低な男だと思われてしまうかもしれませんが……妻との行為によって、僕は僕であるということを保っていたように思うんです」

 智紀さんは、堰を切ったように続けました。

「僕はさして顔も良くないし、会社での成績もそこまで良い方じゃない。ぶっちゃけ、収入も妻のほうが良い。あまり自分に自信を持つことができないまま、暮らしてきているんですよ。そんな僕にとって、唯一、妻を性生活で満足させてあげることが、人生唯一といってもいい“喜び”の時間だったんです。もっとはっきり言ってしまえば、性行為をする時間だけが、オスである優位性を感じられる瞬間だったんです」

 それなのに……。

「更年期のせいでそれが味わえなくなってしまった。喪失感は半端なかったですよ。70代、80代になっても女を抱いている高齢者もいるはずなのに、まだ40代の僕が何で? 愛しい妻を満足させることすらできなくなるなんて、僕が一体何をしたんだ? って……。妻には絶対に言えないのですが、卑屈になってしまいそうな自分がいます」

 すべてにおいて自信が持てなくなってしまった結果か、仕事上でもミスを連発してしまい、上司から厳重注意を受けているという智紀さん。逃れられない恐怖感。今では、暇な時間が少しでもあるとスマホで検索し、EDを改善するための治療法を求めてしまっているといいます。

「妻からは『何だか最近、スマホ依存症みたい。大丈夫?』と心配されているのですが、自分ではもう、止められないんです。コンビニ受け取りができる通販で、海外の治療薬なんかも購入して試してみたんですが、まったく効果がなくて……。最近では『死にたい』とすら思うようになってしまいました。こんなことばっかり考えている僕って、もう……頭がおかしいんですかね」

 しばらくして、智紀さんは涼子さんに自分の正直な思いを打ち明け、だいぶ楽になったといいます。知らず知らずのうちに、男性を蝕む更年期の症状。精神的に自分を追いこんでしまう前に、夫や彼の変化に早めに気付くことは大切。実は、妻や彼女側は「そんなこと、愛には関係ないわ!」と思っても、夫や彼側にとってはとらえ方が違うということもあるかもしれません。

(和栗 恵)