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野良猫へのエサやりは問題なのか 子どもたちに正しい知識を 未来のために訴える「TNR」の重要性
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保健所や愛護センターに引き取られる猫は年々減少するも変わらない環境
動物保護に対する意識は、年々高まっています。実際に環境省が発表した「全国の犬・猫の引取り数の推移」から、平成元年には96.8%だった殺処分率が平成30年には41.8%と、55%も減少。引き取り数自体も大幅に減少しています。また、「全国の犬・猫の返還・譲渡数の推移」は反比例しており、元年には2%だった譲渡率が30年には58.4%に上昇しています。しかし、未だに野良猫を取り巻く過酷な状況は変わっていません。猫との暮らしのアイデアを発信する情報サイト「猫ねこ部」は15日、横浜市関内にある猫カフェ「ミーシス」と協力し、小学生、中学生を対象にした「こども猫講座」を開催。不幸な最期を迎える猫を1匹でも減らすための思いと取り組みについて、担当者を取材しました。
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野良猫を捕まえて不妊手術を施し元の場所に戻す「TNR」という取り組み
「こども猫講座」では、学校では学ぶことができない、野良猫にエサを与える責任や動物愛護についてレクチャーしました。猫ねこ部編集室のディレクター木原優子さんはイベント発案のきっかけについて次のように話しました。
「猫ねこ部では、看板猫から保護猫カフェに至るまで数々の取材を行っていますが、なかでも力を入れているのが保護猫や野良猫の現状に関する発信です。山梨県の保護猫犬団体『ねこねっと山中湖』への月1回の取材時に、年間3000件ものTNRの不妊手術を行う『ふー動物病院』の亀田博之先生と出会ったことです」
それまでも野良猫を捕まえて不妊手術を施し元の場所に戻す「TNR」について取材で触れることが多かった木原ディレクターでしたが、ひとりの獣医との出会いで活動を後押しされたといいます。
「亀田先生の動物病院の山中湖分院が開院した時に、先生の不妊手術現場に立ち会わせてもらったことが大きなきっかけです。現場を目の当たりにし、お話を伺う中でこうした現状を、広めていかなければと思いました」
そんな思いを込めて、今回子ども向けの講座をした理由は2つ。
「野良猫達に餌やりだけを行う人の多くが高齢の方であるという状況を耳にします。そこで、高齢者に向けて発信していくには、おじいちゃん、おばあちゃんを慕う子ども達からの声の方が響くのではないかと思い、まずは子ども達に知ってもらおうと思ったのが理由の1つ目です。2つ目は、『TNR』という概念を広めること。現状では『TNR』で“亡くなっていく命を食い止める”ことが一番の方法とされていますが、これから先、次のステップに進むためのアイデアを子ども達が考える時代がくるでしょう。もしかしたら、猫に不妊手術を施す現状とは、また別の未来が作れるのかもしれません」
子ども達が当たり前のように知っている世の中にしていきたいと、今回のようなイベントを開催したといいます。