Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

話題

「学校も警察も動いてくれない」いじめの放置はなぜ起こる? 元教員が指摘する“悪しき慣例”

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・佐藤 佑輔

仮にいじめと認定されても、学校が加害者を処分できない“悪しき慣例”も

 ただ、それだけの労力をかけて仮にいじめが認定されたとしても、実際に加害者が出席停止などの処分まで至るケースはほとんどありません。学校が加害者を処分できない背景には、長らく続く“悪しき慣例”があるといいます。

「被害者が望むのは、いじめ認定そのものではなく、『加害者をどうにかしてほしい』ということ。具体的には加害者の別室登校、出席停止処分などがありますが、制度上認められていても、実際にその仕組みを運用できるよう準備している学校はほとんどありません。出席停止は加害者の教育の権利を奪う非常に思い処分なので、保護者を含めた事前の説明が不可欠で、後出しでルールを出されても加害者側は納得しない。いじめが起こった際の対応を想定していないので、加害者をどうにかしてほしいと言われても学校側はどうにもできず、結果的に被害者側が我慢を強いられたり、不登校や転校に追い込まれたりといったことが起こるのです」

 暴行や窃盗など、いじめの範疇(はんちゅう)を超えた犯罪行為にあたる事案は、警察など外部機関との連携も不可欠ですが、これも進んでいるとは言い難いのが現状です。

「逮捕や書類送検には証拠があることが絶対条件ですが、それがない場合、学校に警察を呼んでもできることは事情聴取や現場検証程度。窃盗事件があったからと生徒全員の指紋を採取するような強い捜査権限がなければ、たとえ警察であってもできることは限られます。『警察を呼んでも大事になるだけ』『学校内の捜査には限界がある』、そういった双方の遠慮が、学校現場への警察介入を妨げています。でも、それももう古い考えで、今回の一連の動画拡散では、加害者が次々と書類送検されていますよね。本気でやれば捜査できるのなら、最初からやるべきで、それをしない以上、拡散が起こる現状は変わらないと思います」

 一連の動画拡散を受け、スマートフォンなどの録画・録音端末の持ち込みを禁止する学校も出てきていますが、のぶさんはこれらの対応も「時代に逆行している」と指摘。客観的な証拠をもって事態に対処するためにも、むしろ監視カメラの設置などを積極的に進めていくべきだと口にします。

「正直、現場の教員はほぼ全員が監視カメラ導入に肯定的ではないでしょうか。いじめの初期段階でまず最初に起こるのが、靴隠しや物隠し。これは本当に陰湿で、犯人が見つかることはまず絶対にありません。学校側は保護者に謝罪しますが、予算がないので弁償はできない。被害に遭った保護者だって、これじゃあ納得しませんよね」

 学校側は教育委員会を中心に、いじめが起きたときの初動、解決しない場合の対応、加害者の処分、被害者をどう守るかといったマニュアルを整備し、入学の段階で保護者への説明を行う。警察側は犯罪行為には積極的に介入し、ある程度の強権を持って加害者への取り締まりを行っていく。のぶさんは、そうした地道な取り組みこそが、現在横行している動画拡散、ひいては重大ないじめ事案の発生を防いでいくことにつながると主張します。

「いじめ動画拡散の最大の要因は、学校や警察が慣例に従い、対応に本腰を入れてこなかったこと。いじめが許されないのはもちろんですが、もっと悪いのはそれを解決せずに放置している大人たちです。いじめのきっかけは大人の社会でも起こり得る人間関係のトラブルなので、それ自体がなくなることは絶対にない。大事なのは加害者を野放しにせず、被害者に犠牲を強いらないことです。早急に対策を打たないと、今後は動画拡散による私刑がどんどん主流になっていく。被害者も加害者も動画を拡散し報復し合う状況になれば、より深刻な人権侵害に発展していきます。一刻も早く手を打つ必要があると感じます」

 学校現場においても、いじめや犯罪行為を治外法権とせず、実社会と同じように適切に対応していくことが求められています。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・佐藤 佑輔)