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制服の「おさがり」は子どもに無理を強いる? 思春期の体験が一生の傷になることも…折り合いのつけ方をプロが解説
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教えてくれた人:内山 久美子

子どもの入学シーズン、保護者を悩ませる出費のひとつが制服です。一式そろえると10万円近くなることもあり、状態の良い「おさがり」を譲ってもらえるなら、それを活用したいと思うのは自然なことでしょう。一方で、カンコー学生服が中高生1400人を対象に行った調査では、制服のリユースに8割以上が好感を示すも、実際に利用したい人は5割にとどまるという結果も出ています。おさがりの提案は、我が子に我慢を強いることになるのでしょうか。親子での折り合いのつけ方について、自身も三姉妹の母であり認定心理士の内山久美子さんに伺います。
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制服が象徴する「新しい自分」と、否定がもたらす心の傷
大人から見れば「単なる服」と思える制服も、思春期の子どもにとってはアイデンティティや帰属意識を象徴する、非常に重みのある存在です。
とくに受験を経て入学する場合、制服は努力して手に入れた場所の証であり、頑張りを可視化する“シンボル”としての意味を帯びます。新品に袖を通すことは、新しい自己イメージを肯定する大切な儀式でもあるのです。一方、受験のない進学でも、進級は「次のステージに上がった」と実感する大きな節目。安心感の拠り所が家族から他者へ向く時期だからこそ、制服は「変わった自分を示す印」へと変化していきます。
そんな折に「新品が良い」という訴えを「贅沢だ」「もったいない」と否定してしまうと、子どもは「自分の気持ちは大切にされなかった」と孤独感を抱きます。これが繰り返されると「自分は後回しにされる存在」というセルフイメージが定着し、自分の欲求を言わずに諦めてしまうなど、大人になってからの思考行動にも影響しかねません。
制服一着の問題は、物の話で終わらないことがあります。子どもが「どう扱われたと感じたか」が、その後の自己イメージに影響する可能性もあるのです。だからこそ、結果以上に“向き合い方”を大切にしてほしいと思います。
親子で納得できる対話のステップ 「大人の正義感」を押しつけないコツ
家計の事情でおさがりを提案したいときは、対等な対話を心がけましょう。まずは、親側の事情や気持ちを正直に伝えます。そのうえで、すぐに結論を出そうとするのではなく、子どもの反応を待つ姿勢を持つことがポイントです。
もし「絶対に嫌だ」と言われても、すぐに説得に入らず「そう感じるよね」と、まずは子どもの気持ちを認めましょう。現実の話と感情の話を分けて扱うことが、対話をこじらせないポイントです。尊重されているという安心感があって初めて、子どもは現実と向き合う余地を持てるようになります。
そのうえで、もし家庭として大切にしている価値観があるなら、それは“正しさ”ではなく“我が家の考え”として静かに共有するのが自然です。たとえば「うちはこういうやり方でやっていきたいと思っている」「こういう理由で、今回はこう考えている」と、方針として伝えてみてください。理念で説得するのではなく、現実と気持ちを丁寧に説明することが大切です。
思春期の子どもにとって重要なのは、正しいかどうかよりも「自分の気持ちがきちんと扱われたかどうか」。そこが守られていれば、たとえ希望通りにならなくても、関係性は傷みにくくなります。