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制服の「おさがり」は子どもに無理を強いる? 思春期の体験が一生の傷になることも…折り合いのつけ方をプロが解説

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:内山 久美子

判断の目安は「理由の質」

 それでも子どもが「絶対におさがりは嫌だ!」と拒否し続けたら、その理由の質を考えてみてください。

 単に新しいものへのこだわりであれば話し合いの余地はありますが、「周りから浮くのが怖い」「からかわれるかも」といった不安が背景にある場合は、慎重になる必要があります。

 思春期の子どもにとって、学校という社会で周囲と違って見えることへの恐怖は深刻な問題です。対人関係や見られ方への心配が拒否の理由なら、それは本人にとって極めて切実なこと。節約を優先して押し切るより、一度引いて子どもの安心感を優先してあげるのが、その後の学校生活や親子関係を円滑にするための賢明な判断になるでしょう。

現実的なハイブリッド案と、中古への抵抗感を消す魔法

 私自身、3人の娘の母として制服選びに悩みましたが、実践したのは「全部かゼロか」ではない「見た目の印象」を基準にした折衷案でした。

 着用期間の長い冬服、経年劣化で色が変化しやすい体操着やスモッグなど、集団の中で浮いてしまうものは本人の安心のために新調しました。一方で、コートや夏物スカートなど、状態が良く見た目に差が出にくいものは使い回しを選択。ぱっと見て古さがわかってしまうもの、清潔感に直結しやすいものを優先的に新調するだけでも、子どもの心理的ハードルは大きく下がり、納得しやすくなるものです。

 もしおさがりに決まったとしても、特別な演出は必要ありません。一番効果的なのは「その制服を着てくれること自体を喜ぶ」親の姿勢です。古さに焦点を当てるのではなく「新しい生活を始めるあなたがうれしい」「似合っているね。成長したね」と、子どもへの称賛や喜びをダイレクトに伝えてください。親が心から喜び、一歩進もうとする姿を認める空気感があれば、子どもの意識は「中古かどうか」から「新しい自分になった」という誇らしい実感へと自然に塗り替わっていきます。

親の愛情は、制服の価格では決まらない

 本当は新品を買ってあげたいけれど、おさがりに頼らざるを得ないと悩む親御さんは、どうか罪悪感を持ちすぎないでください。家庭にはそれぞれの事情と価値観があります。何かしらの考えがあっておさがりを選んだのなら、それは立派な家庭の方針です。親が後ろめたさを抱えていると、子どもはその空気を察知し、自分を不憫に思ってしまいます。「これがうちのやり方だよ」と、明るく自然体で伝えてあげてください。

 大切なのは、制服の新旧ではありません。子どもの気持ちを丁寧に受け止め、価値観は伝えるけれど押しつけない。その対話のプロセスこそが、子どもにとっては「大切にされている」という何よりの証拠になるのです。

(Hint-Pot編集部)

内山 久美子(うちやま・くみこ)

未来脳教育コンサルタント、認定心理士。三姉妹の母。子育てや中学・大学受験、家族の認知症介護などを経験するなかで、親の声がけや関わり方が子どもの自己肯定感や主体性に大きく影響することを実感。20年間の専業主婦生活を経て、45歳で大学に再入学し、認定心理士資格を取得。現在は脳神経科学や心理臨床の知見をベースに「人の行動は意志の強さではなく脳の仕組みによって決まる」という視点から、「ART SHIFT(R)コーチ養成アカデミー」にて講師を務め、大人のリスキリング教育に力を入れている。
インスタグラム:kumiko.mmr